第一章 基礎理論 気の話

第三節 気の話 その2

これを悪用するものがあるから敬遠する

人は日常的に「気」を使います。

「人を気遣う」「人を気にかける」「気に触る人」など。

また一生懸命やっても中々相手に伝わらないことを「人の気も知らないで」なんてボヤいてみたり。

しかし、日常的に使ってみても、やはり本質が何なのかは難しいものです。

「気」が何なのかわからないから、不安になったり、信用できないというのはお話してきた通りです。

そして、もうひとつに、これを悪用するものがあるから敬遠するといったことも挙げられます。

「気」を悪用するものとは、その見えない「何か」を使って、それ自体で人に攻撃や危害を加えるものがいるということではありません。

いわゆる超能力ですとか、魔法のようなもので「気」を特別な能力として存在させるもの。

普段出来ないことを出来るようになるかのごとく誘導するもの。

例えば「コレを使えば、気が発揮でき、金持ちになれる」「コレを持てば、気を呼び込み、財産を持てる」などを歌っておきながら、実は何でもないものを売りつける悪徳商法。

また「気が足りないから、あなたは不幸」「気の不足があなたの生活と健康を害している」というような勧誘をにおわす怪しい団体の数々。

そのために、その手段として「気」を悪用したり、儲ける手口として「気」を取り上げるということです。

この間違った誤解を与えるものがあるため、人は「気」を敬遠してしまいます。

時には社会現象になるほどの事例が少なくありません。

ですから、それは「おかしい」「へんだ」「あやしい」ということで、「気」の本来の特性を知らずに、その存在を遠ざけてしまうのです。

東洋医学、特に鍼(はり)治療においては「気」の調整ということから始まります。

病は「気」からと言いますが、「気」の存在を充分に理解していくことが大切なのです。

では「気」の調整とは何か

東洋医学的観点から見ていきます

気の思想について

気の思想というのがあります

中国古代、紀元前400年の春秋戦国時代頃に始まったといわれる哲学思想です

「自然、または自然界に営む全てのものに影響を与える根源を成す」という考えで、「森羅万象(しんらばんしょう)の摂理」を表します

「森羅万象(しんらばんしょう)」とは、「天と地の間にある、ありとあらゆる現象」のことです

「天人合一説(てんじんごういつせつ)(後に説明しますが東洋医学の基本理念)」の根底にある内容に基づきます

つまり「気」は身体の生理機能をおし進める一種の動力であり、また、生命活動を維持する源であるということです

鍼灸の鍼(はり)は、この「気」の働きを応用し、わずかな刺激によって治療する道具になります

治療において、いったい「何」が、どのようにして効果を上げるのか考えた時、東洋医学の祖「中国古典医学書医学(古医書医学)」では、これを「気」と理解しました。

この医学が完成した基礎には全ての天地、自然、および肉体から精神に至るまで、統一的にわかる「気」の哲学思想の導入が欠かせなかったのです

これを具体的、かつ現実的に応用していったのが天人合一説にある「陰陽論(いんようろん)」「五行論(ごぎょうろん)」というものです

これについては、また追々説明していきます

(つづく)

第三節 気の話 その3

○参考文献

黄帝内経素問、黄帝内経霊枢、黄帝鍼灸甲乙経、鍼灸聚英、類経圖翼、景岳全書、圖註難経脉訣、脉経、病源辭典、難経の研究、経絡治療講話、鍼灸病証学、傷寒論講義、脉法手引草、内経知要、東医宝鑑、腹証奇覧、子午流注説難、中医学入門、本草綱目、中医指南、国医指南、鍼灸科学、内経解剖生理学、中華医学大全、中医診断釈義、診家正眼、淮南子、気の思想

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