第一章 基礎理論 気の話

第三節 気の話 その1

認められていない「ない」物に対して、人は不安に感じ、敬遠する

「気」というものがあります。

みなさんは「気」に対して、普段、何気なく接し、その言葉を使っているかと思います。

例えば、「気を使う」「気が利かない」「人気(にんき)がある」「人気(ひとけ)がない」「気持ちがいい」「気が重い」等々。

また「元気」「根気」「勇気」「勝気」等、「気」を用いた言葉。

これらを当たり前のように使いますが、「気」の本質の話になりますと遠慮しがちになってしまいます。

つまり、実際に「気」を感じて行動した、「気」を使って何かを動かした、「気」で物を見たというのには、中々、馴染めないものです。

これは目に見えない物に対して、不安になったり、信用出来ないということが作用されると思われます。

普段、何気なく使っている言葉も、それがどういう表れを指しているかを考えるまでには至りません。

なぜなら、これは「気」が何なのか、わからないからです。

わからないというのはハッキリとした、明確な「定義」がないからです。

「定義」がないので、「気」は宙に浮いたものになっています。

日本では、この「気」の本質や五感以外の、いわゆる第六感、幽霊や魂、霊のような存在は現在、認められていません。

認められていない「ない」物に対して、人は不安に感じ、敬遠するのは当然です。

しかし、中国では、この「ない」物の存在を認め、国として、研究の場を与えています。

つまり、「気」は「ある」物として定義しているのです。

私達の国、日本では普段使用する「気」という言葉ですが、その本質となると、わからないからという理由で認めない状態。

ここに何があるのでしょうか。

その本質の中には、実は東洋医学の基礎が見え隠れしているのです。

人間である以上、「気」を持っているはず

日頃よく使う「気」のつく言葉ですが、その本質となると、何だかよくわかりませんよね。

しかし、「気」というのは非常に重要なもので、私達が生きていく上で、無くてはならないものなのです。

「気」には色々あります。

例えば「空気」

これは、無くては生きていけません。

「人気(ひとけ)」

人によって、感じ方は様々ですが、それが誰であるか、「気」だけで見抜ける人もいます。

またこの「人気」が「殺気」を帯びてきた場合、人の防御反応として、感じないと困る場合があります。

人は目に見えない「気」というものを常に持っていて、日常生活に対応しています。

でも、これは人ばかりではありません。

生きとし、生けるもの全てに、この「気」はあります。

人気(ひとけ)のように、人同士で「気」を感じるのがおかしくないとすれば、人が動物や植物に「気」を感じてもおかしくはないのです。

ところが、人が人ではない生き物と「気」を通して接したとしたら、「何だ、それは!」ということになってしまいませんか。

例えば、ある人が森の中で「気」を感じ、ひとりでブツブツと話していたら変人扱いですよね。

その人は、ただ「気」を感じ取って、森に語りかけていたのかもしれません。

話さないまでも、「気」を持つ何かと感じ合っていたとします。

森や自然には精霊がいて、それがわかるというような感じで。

しかし、普通は中々理解できないですよね。

それどころか、否定してしまう。

「あいつはへんだ」などと。

否定する人が人間である以上、「気」を持っているはずなのに。

ちょうど、映画「もののけ姫」みたいなものでしょうか。

主人公の姫だけが「気」を持っているかのような特別扱い。

あの「もののけ」も「物の気」。

「気」なのです。

誰もが持っている「気」であるのに、その力を発した人を毛嫌いしてしまう傾向にあります。

こんなことから、「気」はよくわからないものとなっているのかもしれません。

しかし「気」は、おとぎ話やファンタジーの世界だけではないのです。

(つづく)

第三節 気の話 その2

○参考文献

黄帝内経素問、黄帝内経霊枢、黄帝鍼灸甲乙経、鍼灸聚英、類経圖翼、景岳全書、圖註難経脉訣、脉経、病源辭典、難経の研究、経絡治療講話、鍼灸病証学、傷寒論講義、脉法手引草、内経知要、東医宝鑑、腹証奇覧、子午流注説難、中医学入門、本草綱目、中医指南、国医指南、鍼灸科学、内経解剖生理学、中華医学大全、中医診断釈義、診家正眼、淮南子、気の思想

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