第一章 基礎理論 気の話

第三節 気の話 その3

人間だけに与えられた「気」の使い方、精神と意思

普段、見ることの出来ない「気」というものですが、これは常に我々の回りに存在し、自然や自然界の全ての根源をなすものだということをお伝えしました

「気」の特色は、その働きが空間的(動)にも、時間的(静)にも存在している点です

空想科学的、あるいはSF的に言えば、「気」は時空を越えて、我々の三次元の世界から四次元の世界に至るまで絶えず流れています

そして「気」は身体にも存在しています

それは身体の各部分を独立した形態とみなし、自然環境や生活環境によって変化していきます

人間の身体と自然や自然界の関係は常に自然界の受動的作用を受けながら、同時に、それに対して能動的に働きかけることです

動物や植物のほとんどは自然界の状態によって受動的に決定されますが、人間は自然界に能動的に働きかけることが出来ます

つまり、動植物は与えられた自然の中でしか生きられませんが、人間は与えられた自然を変化させて生きることが出来ます

例えば、人間は火を起こしたり、道具を使ったりします

衣食住を得るために、自然にあるものに対して、受動的にも能動的にも束縛されることはありません

これは人間の特徴と言えます

人間には「精神」と「意思」があるということです

生き物の中で、人間だけに与えられた「気」の使い方になります

では、人間だけの「気」とはどういうものでしょうか

「本能」と「思考」

人間の特徴である精神と意思ですが、「気」の生理的特色との関係として、「自然環境と生活環境に順応していけば人間は健康だ」ということが言えます

しかし、意思の安定した精神状態というのは中々少ないものです

自然界との関係から言えば、受動的かつ能動的に動いていて、絶えずその活動を続けています

身体は単なる組織の集合体として存在しているのではなく、1つの動的な「本能」と「思考」が働かなくてはならない

それが「気」というものです

その特色は「ハタラキ」であり「物質ではない」ということです

その「ハタラキ」が空間的に「動の気」と時間的に「静の気」との2つを作っています

これが身体の機能を統一するという働きを持つものであり、これによって身体は初めて動くことができます

身体は2つの要素、「気の働き」「物質的なもの」で構成されているということです

「気」と「物質」の二元性を持ちますが、「気」だけにとらわれてもなりません

しかしながら「気」は形あるものではなく、「物質」に変化を与えるだけでもなく、それ自身が「動」と「静」として進化発展していくものです

そして「気」は次第に意識化し、「気分」となり、さらに、「触覚」「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」となり、合わせて「自覚」となります

最後に「本能」となり、この「本能」は「無心の意識」へと発展していきます

ここに「人間独特の精神」が誕生するのです

(つづく)

○参考文献

黄帝内経素問、黄帝内経霊枢、黄帝鍼灸甲乙経、鍼灸聚英、類経圖翼、景岳全書、圖註難経脉訣、脉経、病源辭典、難経の研究、経絡治療講話、鍼灸病証学、傷寒論講義、脉法手引草、内経知要、東医宝鑑、腹証奇覧、子午流注説難、中医学入門、本草綱目、中医指南、国医指南、鍼灸科学、内経解剖生理学、中華医学大全、中医診断釈義、診家正眼、淮南子、気の思想

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