体そのものが昔の人と同じなら、昔の人の治し方で現代の人も充分治せる
中国古典医学書「黄帝内経(こうていだいけい)」は古代中国で約二千年前に編集されたという説があります。
二千年前というと、中国に限らず、この頃の世界情勢はまだまだ発展途上にあり、文明が出来ては消え、栄えては衰え、その繰り返しで社会は形成されていきました。
しかし、発展途上とは現代の文明社会に対比した見方であって、古代の各文明社会は多くの謎を残しながらも、我々の理解では考えられない生活環境を作ってきたのです。
例えば、エジプトのピラミッドやスフィンクスの謎を始め、消えた大陸のアトランティス文明、インカ帝国や空中都市マチュピチュ、地上絵で有名なペルーナスカ等々、今の尺度では計り知れない高度な文明があったとも言われてます。
文明が高度にせよ、発展途上にせよ、我々とは異なる生活様式があった一方で、一つだけ「今と全く変わらないもの」があります。
それは「人間の体そのもの」です。
大きさの変化や多少の進化はあるものの、人間を構成するパーツや生理機能自体は我々とほぼ変わりません。
つまり、「体そのものが昔の人と同じなら、昔の人の治し方で現代の人も充分治せる、治し方も同じだ」ということ。
書物にある二千年前の治療法というと、ピンとこないかと思いますが、「黄帝内経(こうていだいけい)」とは謎めいた神秘の書物ではなく、現代社会の病にも対応している書物なのです
黄帝と主治医の問答から物語は進んでいく
古医書である「黄帝内経(こうていだいけい)」は「素問(そもん)」「霊枢(れいすう)」という2つの書物から成り立っています。
もちろん、書物といっても、当時は紙など無い時代でしたから、竹串や樹木片等に書いたものでした。
ですので、読みにくい箇所や紛失してしまったものもたくさんあります。
古医書ですが「素問」は治療の基礎理論や養生、また思想や哲学など。
「霊枢」は治療のための鍼(はり)の運用や技術について記されています。
まだ謎の部分は多いですが、この2つの書物はある一定の期間に、ある特定の人物が一人でまとめたものではないとされています。
両書とも、今の医学書のような、例えば、解剖学や生理学のような分野別の専門書ではありません。
時の権力者、黄帝とその主治医らによる問答と会話を記したもので、ストーリー形式。
黄帝が主治医に尋ねるところから始まります。
「遥か昔の人々は、年齢が100歳を越えても老いを感じることなく、元気に動いていたと聞く。ところが、今の人々は50歳前後で衰えた様子だ。現代人と昔の人では、どこが違うんだ?」
これに対して主治医は「昔の人々は養生についてよく理解していました。フィジカル的にも、メンタル的にも健全で自然の摂理を守っていました。ですから、100歳以上生きる人が多くいました。それに比べ現代人は不摂生ばかりで、生活に節度がありません。ですから、すぐに老いぼれてしまうのです」
黄帝は言いました。
「じゃあ、どうすれば、昔の人のように100歳まで生きられるんだ?」
こうして、黄帝と主治医の問答から物語は進んでいくのです
(つづく)
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第二節 古典医学書から学ぶ その3