瘀血と痰飲について その2

2017年 1月8日 新年学術研究

瘀血と痰飲について     金崎文代

痰飲の概念

痰飲とは、津液が滞り、凝集したものをいう。
痰は粘稠な物をいい、飲は希薄な物をいう。

津液に於いては
脾、肺、腎、三焦が大きく関わって来ます。

脾は飲食物で、摂取された水分を消化吸収する。

肺は津液を全身に散布する。
又、呼吸作用や発汗作用により、水分を外に排出する事で、
身体の恒常維持を保とうとする。

腎は余分な津液を尿として体外へ排出する。

三焦は水道を疎通し、気血津液を周流させる。

よってこの脾肺腎の機能失調によって、
液を津液に化する事が出来なくなり痰飲が形成される場合と
水分が正常に気化して排出されないで体内に貯留して痰飲が形成される場合があり
三焦の働きが失われると、津液は、停滞し、気は滞り、やがて痰飲を形成する。

痰飲の原因

  • 外感六淫→肺が外邪によって傷られた場合、肺気が鬱滞し、化熱化燥し、肺の津液を灼熱し痰飲を形成する。
  • 七情内傷→情志に影響を受けて、肝鬱気滞し火に化して津液を灼熱し痰飲を形成する。
  • 飲食 →お酒、お肉、脂っこい物、甘い物、生ものを好んで食べていると、湿が集まり化して痰飲を形成する。
  • 環境 →久しく湿度の高い環境にいたり、水中での作業が多いと、外湿が脾陽を傷つけ脾の運化の働きが弱くなり、水液が津液に化する事が出来ず痰飲を形成する。

痰飲は身体の至る所で発生し、場所により分類出来る。
古典からの抜粋として【病源辞典】【金匱要略】から痰飲を調べてみました。

病源辞典では

痰飲
脾胃が運化するとこが出来ず
飲食物の糟粕、及び津液がすべて心下に停滞し
長く留まりて化せず、よって肺中に熱が発生し、燻蒸して痰となる。

吐き出す事も出来ず。それが蓄積して飲となる。

病状
胸中に水の流れる様な音があり上腹部が悶々として痛み
涎が口からあふれ、呼吸が短く、動悸し微かに喘ぐ。

脈は弦脈に匹敵する。

痰と飲の区別と種類

痰と飲は濃度や清濁の違いによって区別する。

痰証ー稠濁

無形の痰 痰液を目見ることが出来ないが
治痰薬が効果あるもの

癭癘〈頸部に出来る腫れもの〉

痰核〈皮膚に発生する可動性の腫瘤、湿痰が流集して出来る〉
中風等有形の痰 肺から喀出される、目に見える痰。

飲証ー清稀 〈金匱要略〉

痰飲(狭義〕

水毒が胃部に停留する。胃内停水がある。

【金匱要略】では
その病人、もともとは盛んにして今は痩せ、水が腸間に走り、瀝瀝(水の音)が聞こえる。
これを痰飲と云う。
〈上腹部を指頭で叩くと、ポチャポチャと云う様な音がする〉

懸飲(ケンイン)

水毒が心胸下にある。滞留して引痛する。

【金匱要略】では
水を飲んだ後で、その水が胃から流れて脇下にあって
そのために䈙や唾が出て、引く様な痛みがある。
これを懸飲と云う。
〈水分の留滞が側胸部にあり、咳をしたり、唾を吐いたりする時に、胸痛がある〉

二階堂先生の解説

津液がそこに停留して、䊡中のところが痛い。
その津液は、湿性の胸肋痛、或いは肺病になる。

湿の捉え方:
湿気が多いという事はありとあらゆる分野がある
風寒と云うのは天の話し
寒熱と云うのは地の話し
その中間に湿気の盛衰があり、万物、人間の盛衰がある。

心臓は君主の官なので自分自身が壊れる事はない。
湿は火生土の土なので、前から来た邪気という事になり、悪候が多い。

例えば、親が心臓とすると子供は脾臓
脾臓がだんだん大人になると、脾臓は心臓のいう事をきかない。
それは、湿気が心臓に多くなるときかなくなるという事。
そうゆうところから、親の心臓も子供の肺臓も壊れていく。
よって胸肋痛や肺病が多い。

溢飲(イツイン)

水毒が四肢に流行して、皮膚、肌肉に浸潤し、水腫を起こす。

【金匱要略】では

飲んだ水が流れ行きて、四肢に帰し、まさに汗出るべきにして汗がでず。
身体は仏いて痛み、重く感じるのが溢飲である。
〈体内の水分が順調にめぐらず、水分代謝が障害され、全身浮腫で皮下に
水分が滞留した状態〉

二階堂先生解説

これは、溢れる飲、これは手足に水毒が巡って手足が水ぶくれみたいに腫れている。そして、皮膚、肌肉は浸潤している。ベタベタしている。その結果、水腫
を起こす。この場合は、手足ですから、脾臓が病んでいる。当然、外から見える。

支飲(シイン)

水毒が心下に停留して、気息喘満する。

【金匱要略】では

䈙がこみ上げ、息が偏り、呼吸短くー呼吸促迫して、横に寝る事ができず
その形は腫れているように見えるのは支飲である。
〈体内の水分の代謝障害、胸膈や胃部に水分が停滞している〉

二階堂先生解説

支飲と言うのは、水毒が心下に停留している。
心下というのは鳩尾の所、これは肝臓、肝臓に停留して、肝臓の働きが停滞する。
このため反対側の肺臓が病気になる。

これは、病の盛衰という言い方。
よって、血の肝臓が壊れたら、反対側の肺臓の病気になる。
そのため、気息喘満して、呼吸が苦しくなる。

伏飲(フクイン)

水毒が潜伏していて、ある条件が整った時に、発病する。
見分ける事が難しく、初発の外に現れている症状や腹症、脈症によってその部位を診察する。

【金匱要略】では

膈上が痰の病になり、胸がはり喘咳吐し、発する時は寒熱し、背痛と腰痛が起こり、ひとりでに目に涙が出る。
その病人がゆらゆらと身を身を動かし、ピクピクと痙攣が激しく起こるのは、伏飲が有る

二階堂先生解説

これは津液が身体のどこで壊れているのかわかりにくい。
この場合は咽喉に痰飲が有るが、どこが病気かわからない。
その時には外側に現れてくる、六淫の症状、七情の症状。

内側に現れてくる飲食物の薫りの気味と味の五味の変動を診る。

脈象は津液だから、右側の尺中、三焦の脈を診て伏飲というのはわかるが、難しい。

痰飲のまとめ

痰飲は非生理的水液(津液)の排泄機能
即ち呼吸の気、飲食のき、皮膚、二便等、排泄機能障害により
体内に停滞した不必要な津液の変化をいう。

痰飲は脾胃の運化能力の不調和により
飲食物の糟粕、及び津液が均しく心下に停滞し、停留して化せず
肺中に熱を生じその結果、燻蒸し痰飲となる。

津液の病になって、喉に痰が出てくると
その痰はどうゆうものか、分けていく。

陽症は胃、陰症は脾という事に分けられますが、
胃は食べ物から、脾は気血営衛の供給の状態による。

この胃というのは、胃の気の脈の事。
胃の気の脈は、陰陽の脈、四時の脈、三陰三陽の脈、十二内臓の4種類
総称して胃の気の脈。

脾臓は気血営衛であり、飲食物として生体に入った時に
目的別、内容別に言葉が変わる。

この気血営衛を気血と言い
私たちは、この気血を調整する。

診断し鍼をして、皮膚のところで、腎脂が確認できれば
胃の気の脈の調整が出来た

脾臓の気血営衛の巡りが順調にいったという証拠になる。

(発表終わり)

  • この記事を書いた人

徳田漢方はり院- 徳田和則

先代から受け継いだ伝統鍼灸を次世代に伝えたいと思っています

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