
前回(その1)では、気とは「動きを維持する動力源」であると説明しました。人間や動物が活動し、植物が成長する背後には、必ず気が存在します。もし気がなければ、一切の動きが失われ、生命はただの物体へと変化すると考えられます。
1. 気と哲学思想の関係
気は東洋医学だけでなく、さまざまな哲学や民俗的世界観の中にも登場します。具体例としては、
「あの方角は気が良い」
「気が悪いと運勢も悪くなる」
などの表現が代表的です。しかし、これらは科学的根拠とは別の次元にある“哲学的・思想的な気”に由来することが多く、解釈の幅が非常に広いのが特徴です。そのため、見えない気を利用して人間の欲望や名誉心をあおり、あやしい伝統や文化を押しつける事例も少なくありません。勉強の際には、信頼できる情報を選別しながら進めることが大切です。
2. 気に陰陽学説を取り入れる
東洋医学では、気を診断・分析する際に「陰陽学説」を組み合わせます。陰陽のバランスが崩れることが病気の根本原因である、という考え方が基本にあるからです。
陰陽学説とは
万物を「陰」と「陽」という対立しながらも相互に依存する性質に分け、バランスを探る学説です。
この陰陽学説を「気の状態」に応用した場合、具体的には次のように分析を行います
動と静という視点
東洋医学では、気を「動きがあるか・ないか」という観点から「動静」で捉えます。
動 = 陽
静 = 陰
とはいえ、「静」といっても完全に止まっているわけではありません。たとえば、花が咲く様子をイメージしてください。実際には数時間〜数日かけて咲いているため、目視では止まっているかのように見えます。しかし確実に成長は進行しており、生命活動も続いています。この「緩やかな動き」が「静」の状態です。つまり、死んで動かないわけではない点に注意が必要です。
3. 腕の痛みから見る「動静」の具体例
腕が痛い患者さんがいたとき、東洋医学的には次のように区別します。
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腕を動かして痛む → 「動」の問題(陽証)
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気が動く(=陽)の状態に不調があると判断
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じっとしていても痛い → 「静」の問題(陰証)
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動かずとも痛む場合は、気の静的な側面(=陰)の不調を示唆
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4. 陽証と陰証の治りやすさ
一般的に、陽証(動の異常)の方が治りやすいといわれます。たとえば、ぎっくり腰のように「急性で派手に痛む」ケースは、治療により痛みが劇的に改善しやすいことが多いです。一方、陰証(静の異常)は症状が地味で長引く場合があり、慢性的にジクジク痛みが続くようなタイプが該当します。
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治りやすいから良い/悪いではなく
症状の派手さと治癒のスピードは比例しやすいという傾向がある、という理解が重要です。
5. 気と陰陽の考え方が治療に有効な理由
シンプルかつ正確な分析が可能
「陰陽学説+気」という枠組みによって、どちらに原因があるかを直感的に見分けやすくなります。誤診や治療の方向性を絞り込みやすい
陰なのか陽なのかを区別できれば、アプローチも限定しやすく、治療の軸がブレにくい。
このように、単純でありながら本質を捉える理論こそが、東洋医学の大きな強みの一つです。
6. 次回予告:気と五行の関係
最後に、気と陰陽学説を押さえたうえで、さらに五行説を組み合わせることで、病気や身体の状態をより立体的に分析できるようになります。次回(その3)では、「気と五行の関係」について掘り下げていきます。ぜひ併せて学習してみてください。