痛みがあると「まずは温めようか、それとも冷やすべきか」と迷われる方がたいへん多くいらっしゃいます。
ネット上には「温めて血流を良くしたほうが良い」「冷やして炎症を鎮めたほうが良い」
と真反対な情報などがあふれます。もし判断を誤ると回復が長引くこともあります。
本記事では、初心者の方でも自分の身体の状態をしっかり判断できるよう、東洋医学と現代医学の両方から詳しく解説します。読み終えるころには、痛みの対応に迷わなくなるはずです。

1 触れて確かめる――温度差が最初の手がかり

痛みを感じる部位にそっと手を当て、左右反対側の同じ場所、または痛い部分の周囲と温度を比べてください。
熱さがはっきりと分かる場合、そこでは炎症が起きています。炎症とは、損傷を修復するために血管が拡張し、血液が集中している状態です。こうした「熱を帯びた痛み」は温めると必要以上に血流が増え、炎症が悪化しかねません。冷やすことで、炎症性物質の拡散を防げるため、まずは氷や保冷剤などで10〜15分ほど冷却しましょう。

痛いところを指でさわって温度差がよくわからないときは、炎症が少ないと判断できます。その場合、冷やすと自然治癒を遅らせますので湿布などは必要ありません。

2 時間経過で見極める――急性期と慢性期の違い

発症してから48時間(2日)を「急性期」と呼びます。捻挫・打撲・ぎっくり腰などが代表で、組織に細かな損傷が生じ、それを修復するときに炎症が起こります。急性期は「冷やして」腫れを抑えるほうが治りが早いのですが、冷やし過ぎて血流が悪くなると、自然治癒に必要な物質が届きにくくなります。目安としては「痛いところの温度が周囲と同じになったら冷却は終了」です。

2日を過ぎると炎症は、「回復期」となり、あたためて巡りを促すとよいでしょう。
東洋医学では、痛みは「気血(きけつ)のとどこおり」と表現し、温めて流れを良くすることでとどこおりが解消されると考えます。

3 湿布薬の正しい使い方――「冷」「温」より作用を見極める

「冷湿布」と「温湿布」に迷われる方が多いです。
どちらも効果は大きく二つです
1、消炎成分(抗炎症)
2、局所麻酔成分(鎮痛)
です。

急性期は1の炎症を鎮める働きが根本治療として期待できます。
一方で慢性期の痛みにシップを貼って楽になるのは麻酔成分のおかげです。
麻酔によって“痛みのスイッチ”を一時的にオフにしているだけです。貼っている間は楽でも、剥がすと痛みが戻るようなら根本的には治癒していません。

特に冷感タイプは長時間貼ると皮膚温が下がりすぎ、血流が低下して回復を遅らせる恐れがあります。違和感があれば早めに外してください。

4 東洋医学的な視点――「寒熱」と「実虚」で考える

東洋医学では痛みを寒熱と虚実で診断します。

「寒(冷え)」と「熱(余分な熱)」
「虚(不足)」と「実(停滞)」

急性の捻挫は「熱実」、慢性の肩こりは「寒実」、長年の腰痛で力が入らないものは「寒虚」といった具合です。

熱実は冷やして熱を抜き、寒実は温めて巡りを良くし、寒虚には温補――温めながら気血を補う治療を選びます。

自宅で判断がつきにくいときは、痛む部位に温熱パックを当ててみて「気持ち良い」と感じれば寒性、「熱い」「むずむずする」と感じれば熱性と覚えておくと簡単です。

5 まとめ――触れた温度・発症からの時間・心地よさで判断する

  1. 触って熱いなら冷やす――炎症の進行を抑えるファーストエイド。
  2. 発症後三日以内は冷やし、以降は温めを試す――ただし楽になるかを指標に短時間から。
  3. 湿布は消炎か麻酔かで役割が違う――慢性痛への貼り続けは本質的な治癒を遅らせる場合がある。
  4. 東洋医学では「寒熱・実虚」で捉える――温冷の心地よさは体質判断のヒントになる。
  5. 迷うときは刺激を加えず安静に――痛みが続くときは専門家へ。

「温めるか冷やすか」の選択は、回復を大きく左右する初動です。ご自身で判断がむずかしい場合や、触れても熱を感じないのに腫れが強いときには、決して我慢せず私たち専門家にお早めにご相談ください。適切なタイミングと方法を選ぶことで、痛みは驚くほど速やかに軽減し、再発リスクも減少します。どうぞ安心して、身体の声に耳を傾けながらケアをなさってください。

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