
冬の間は調子が良かったのに
暖かくなったり寒くなったり春めいてくると
頭痛、めまいなど自律神経の不調になる方が多くご来院されます
春に症状が出てしまうのは何故なのか?
東洋医学的に考えてみます
冬の間眠っていたカラダが、春の「発芽」で動き始める
冬は「貯蔵と鎮静」の季節
東洋医学では、冬は「貯蔵」と「鎮静」の季節にあたります。
**腎(じん)**を中心にエネルギー(気・血)が体内に蓄えられます
外の寒さにあわせて、筋肉や関節は縮こまり、身体が動きを抑えるモードに入ります
春先の大きな変化
暖かさと寒さが交互に訪れる**三寒四温(さんかんしおん)**の頃になると
自然界と身体は一気に活動を始めます。
土の中でじっとしていた植物の芽や虫たちが外へ出てくるように
人間の身体も内側から外向きへとエネルギーが動き出すのです。
カラダが固まっていると痛みが出やすい
春には動きがあります
冬の間に筋肉や関節が過度に硬直していた方は
動こうとする部分がそれ以外の硬い部分に引っ張られ、痛みやコリなどの症状を起こしやすくなります。
特に**経絡(けいらく:気の通り道)**がスムーズに働かないと
頭痛やめまい、自律神経の乱れが表面化しやすいのです。
春のカラダは骨盤からゆるみ出す
骨盤が最初の“解放ポイント”
春に向けて動き出すとき、最初にゆるみ始めるのは骨盤です。
骨盤は上半身と下半身をつなぐ要(かなめ)であり、ここが柔軟だと全身の動きがスムーズになります。
逆に骨盤が硬い人は、いわゆる“土台”に負担がかかり、最初に腰痛として症状が出やすいのです。
立春ごろから始まるカラダの変化
東洋医学では、2月の立春(りっしゅん)を過ぎるころから
春の気が本格的に動き始めるとされています。
もしこの時期に腰痛が出たなら、それは春の病(はるのやまい)の一つと捉えることができます。
骨盤まわりが硬直したままだと、動きにともなって他の部位にも影響が波及しやすくなるのです。
3月になると腰から胸部や首肩に症状は移動する
腰痛から上半身の不調へ
2月に腰痛を感じやすい方は、3月になると症状が胸や首肩などの上半身に移行することがあります。
これは、身体の動きがさらに上部へ伝わることで、胸椎(きょうつい)や頸椎(けいつい)が動き始め
そこに滞りがあると痛みや不快感が出てくるからです。
胸の症状としては
- 息苦しい
- 動悸
- 背中が苦しい
などがあります
首肩の痛みが出てくることも多いです
春には、その人がもともと持っているものが出てくる
「潛在的な不調」が表面化しやすい季節
2月に腰痛が出やすいといっても、もともと腰に問題がない方には症状が出づらいものです。
逆に慢性的な腰のハリや骨盤の歪みがある方は、春先に急に痛みとして出てくることがあります。
自然界と人間の新陳代謝
春には自然界で虫や芽が地上に出てくるように
人間の身体でも内側から外へ向かって新陳代謝が活性化します。
冬の間に溜め込んだ疲労や老廃物が排出されるタイミングでもあるため
隠れていた不調や毒素(身体にとって不要なもの)が表面化することが多いのです。
春はデトックスの時期です、花粉症などはその一例です
東洋医学での考え方:春は肝臓が旺盛になる
五行説における「春=木」、「肝臓」の関係
東洋医学の**五行説(ごぎょうせつ)**では
春は「木」に属し、身体の臓腑では「肝(かん)」が最も影響を受けやすい季節とされています。
ここでいう肝は現代医学でいう肝臓に相当する部分が大きいですが
ストレスや情緒面も含めた広範な機能を指すことが多いです。
肝の症状として代表的なものは
- 頭痛
- めまい
- イライラ
などです
体内の濁りが肝臓に負担をかける
東洋医学では、体内に溜まる**“濁り”**(不要物や老廃物、瘀血〈おけつ〉など)が
肝の解毒作用に負担をかけ、これがさまざまな不調の原因になると考えています。
解毒作用に負担をかける代表は「食毒」と「社会毒」です。
社会毒としては
フッ素、電磁波系、プラスチック、洗剤やシャンプーなどの合成製品、放射性物質
などがあります
食毒としては
無駄な薬、農薬、食品添加物、トランス脂肪酸、砂糖と甘味料、遺伝子組み換え食品
などがあります
肝臓は強い臓器です
無添加、無農薬について、私は手軽なところから少しずつ増やしています
春の病気は冬から春にかけてが治療しやすい
春は「肝」の症状が出やすいが、同時に治療のチャンスでもある
春は肝が活性化しやすい分、頭痛やめまい、精神的なイライラを感じやすい時期です。
しかし、東洋医学的にはこのタイミングでこそ肝の問題を根本的にケアしやすいとも考えられています。
五行でいう春の「木」は、自然界と身体が同調しているため、肝を調整しやすい季節でもあるのです。
春の旬の力を取り入れる
自然界が「木」の力で満ちていますので
春が旬の食材を摂ることで肝の機能をサポートできます。
例えば、キャベツ、レタス、新玉ねぎ、ごぼう、春にんじん、アスパラなどです
これは自然界のエネルギーが体内にも取り込まれ
五行のバランスを整える助けになると考えられています。
東洋医学の鍼灸治療
また、東洋医学の鍼灸(しんきゅう)は、経絡を通じて身体を自然界のリズムに適応させる治療法です。
鍼灸は、五行や陰陽の理論を応用し、季節に合わせて臓腑の働きを整えることで
慢性症状から急性の痛みまで幅広くアプローチします。
特に春は肝経(かんけい)を中心に調整する施術を行うことが多く
頭痛・めまい・イライラといった肝の症状に対して効果的です。
まとめ
• 冬の間は貯蔵と鎮静:身体が内向きにエネルギーをため込んで、筋肉や関節はやや硬くなりがち。
• 春は発芽の季節:自然界と同様に、人間の身体も外向きにエネルギーを動かし始める。硬くなった部分がスムーズに動かないと、頭痛やめまい、自律神経の不調を引き起こす。
• 骨盤から解放が始まる:2月ごろに腰痛が出たら、春のカラダへの移行がうまくいっていないサイン。3月になると胸や首肩へ症状が移ることも多い。
• 春は肝臓が旺盛になる:五行説で春は「木」に属し、肝(肝臓)の働きが活発になることで頭痛、めまい、イライラが起こりやすい。
• 濁りを取り除く生活習慣:社会毒や食毒を減らし、なるべく自然なものを選択することで、肝への負担を軽減する。
• 治療の好機:春は肝の不調が出やすい反面、肝を整える絶好のタイミング。五行の流れに沿って鍼灸などの東洋医学的アプローチを活用すると、治りやすい季節でもある。
春先に体調が乱れる方は、冬から春の移行期に自分の身体がどう変化しているかを観察し、早めの対策をとると良いでしょう。自然界のリズムと同調した生活とケアを心がけることで、春をより健康的に過ごすことが可能です。