
はじめに
「体にいい食事をしたいけれど、どこから手をつければいいのか分からない」というご相談は非常に多いです。一般的には「バランスのよい食事を」と言われますが、その“バランス”をどのように捉えるかが難しく感じます。
東洋医学には、食材を五行(木・火・土・金・水)や陰陽、虚実といった視点で分類し、季節や体質に合わせることで健康を保つ考え方があります
本記事では、初心者の方でもイメージしやすいよう、東洋医学と現代の栄養学、さらに先住民の知恵などを交えながら「体にいい食べもの」についてさまざまな角度から解説していきます。
1. 季節に合った食べもの魚と野菜の違い
1-1. 旬の魚は美味しい、旬の野菜は体に良い
- 旬の魚
「旬の魚」はおいしさが最大のメリットとされています。魚の脂の乗りや身のしまりがベストな状態であるため、栄養価も高く、うまみが強いという点はあります。
東洋医学では季節によって魚が違う影響を与えるとは考えません。 - 旬の野菜
一方で「旬の野菜」は、取れる時期によって体への作用が大きく異なります。これは東洋医学の陰陽論に基づく考え方で、野菜が本来もつ「体を冷やす/温める」性質が、食べるタイミング(季節)と合致すると、より体にプラスに働くからです。
具体例
- 夏野菜(トマト、キュウリ、ナスなど):体を冷やしたり、余計な熱を発散させたりする性質があります。夏の暑さから体を守り、だるさや重さを取り除くのに役立ちます。
- 冬野菜(ホウレンソウ、小松菜、大根など):体を温める、あるいは風邪を防ぐ作用があります。寒さで冷えやすい体を内側から温め、免疫力をサポートします。
ポイント解説
- 夏に夏野菜を食べれば「熱を冷ます」作用が期待できるが、冬に夏野菜を多くとると体を必要以上に冷やしてしまう。
- 同様に、冬野菜は寒い時期に食べてこそ効果的ですが、逆の季節である夏に食べすぎると体に余分な熱がこもってのぼせたりの原因になることも。
2. バランスの良い食事とは何か?
2-1. 一般的な栄養バランスの捉え方
厚生労働省などが推奨する、いわゆる「主食・主菜・副菜を揃えましょう」という食事バランスガイドは、多くの方が一度は目にしたことがあるでしょう。これは以下のように整理されています。
- 主食:ごはん、パン、麺など炭水化物
- 主菜:肉、魚、卵、大豆製品などタンパク質
- 副菜:野菜、きのこ、海藻、芋類などビタミン・ミネラル供給源
もちろん、この基本的な栄養バランスは大切です。しかし、現代人は炭水化物過多になりやすかったり、実際にはタンパク質や野菜が不足していたりする現状も多く報告されています。
さらに医療費が増加していたり(治らないからでは?といった疑問)
慢性疾患の増加(普通に食べていても生活習慣病になるのでは?)といった社会問題も見逃せず
「ただ指針通りに食べるだけでは健康維持が難しいのでは?」と疑問を感じる方もいらっしゃると思います。では食事のバランスとは一体なんでしょう?東洋医学で考えてみます。
2-2. 東洋医学が考える五味とバランス
東洋医学では、食べものの味を「酸・苦・甘・辛・鹹(かん=塩辛い味)」の五味に分けて考えます。これを五行(木・火・土・金・水)と関連づけ、季節や体質に応じてバランスよく摂ることが大切だとされています。
- 酸味(木):発散を助ける、体を引き締める
- 苦味(火):余分な熱を冷ます、湿気をとる
- 甘味(土):エネルギー補給、緊張をゆるめる
- 辛味(金):血行を促す、冷えを散らす
- 塩辛味(水):体を潤す、引き下げる力
甘味過多への注意
現代人にとって特に問題視されるのが「甘味のとりすぎ」です。甘味は脾(消化吸収の中心)や思考にも影響しすぎると、糖尿病やむくみなどに発展する可能性があります。甘いお菓子や加工食品だけでなく、熟成や技術開発によって野菜や果物そのものの甘味も強くなりやすい昨今、甘味依存には要注意です。
3. 先住民の食事バランスから学ぶこと
「西洋の近代食」が入る以前の先住民には、虫歯や成長障害といった病気が極端に少なかったという調査報告があります。ウェストン・プライス博士のフィールドワークによれば、先住民らの食事は精製された穀物や砂糖に頼らず、ビタミン・ミネラル・タンパク質を多く含む伝統食(肉、魚、野菜、海藻など)を中心としていたようです。
これらのことが「先住民に病気が極端に少なかった」大きな要因だと考えられています。
- タンパク質やビタミン・ミネラルの重要性
東洋医学でも「先天の精(生まれ持ったエネルギー)」を後天の飲食物で補うことが病気予防の鍵だといわれます。歯や骨は、先天の精が不足するとトラブルが出やすい部分とされており、これらを補うためにも栄養価の高いタンパク源と野菜類をしっかり摂ることが望ましいのです。
4. 病気を治す・予防するための食べ方
4-1. タンパク質(肉・魚)をしっかり摂る
肉や魚に豊富なタンパク質は、免疫力や筋肉、臓器など私たちの体を構成する“素材”になります。
- 免疫機能の維持:たんぱく質不足は免疫細胞の働きを弱めます。
- 組織の修復:怪我や病気などで傷んだ細胞を修復するときにもタンパク質は必須です。
Q:肉と魚ばかり食べて大丈夫?
A:野菜をしっかり組み合わせれば問題ありません。炭水化物過多を避け、野菜を多めに摂ることで、内臓への負担を軽減しつつ栄養バランスを保つことができます。
4-2. 野菜の旬と質を見極める
- 旬の野菜は栄養価が高く、季節にあった性質をもつ
たとえば冬野菜には体を温めたり免疫を上げる作用があるものが多く、夏野菜には冷却・解毒の作用があるものが多いのが特徴です。 - 調理法にも注意
冬野菜は煮たり蒸したりといった温かい調理法に向いています。夏野菜は生や冷製料理でさっぱりいただくと、理にかなった食べ方になります。
4-3. 炭水化物は「足りないとき」だけ補う意識
現代は、パンや麺類、お菓子など炭水化物にあふれています。そのため、特別意識しなくても炭水化物は容易に過剰摂取しがちです。運動量の少ない生活が続けば、余った炭水化物は体脂肪として蓄積されるリスクがあります。
- ポイント
- 体を動かすエネルギーが必要な人(重労働、アスリートなど)は適度な補給が必要。
- そうでない人は主菜や副菜から先に食べ、自然と主食の量を抑える工夫をするといいでしょう。
5. 体質に合った食べものを選ぶ(虚実・五行・九星)
5-1. 虚実と消化力
- 虚の体質:消化力や吸収力が弱く、食べても栄養になりにくい。
- 「少なくても質の良いもの」を意識し、良質なたんぱく質やビタミン・ミネラルをしっかり摂る。
- 実の体質:食べる量や種類が多くなりがちで、余計な成分を摂取しやすい。
- 炭水化物や添加物のとりすぎに注意し、胃腸を常に休める日を作るのも一手。
5-2. 五行・九星による体質傾向
東洋医学の考え方では、生まれ年や生まれ月から「木・火・土・金・水」の性質を9つ(九星)に分け、体質の特徴を分析します。
- 土の体質:太りやすい、むくみやすい
- 水の体質:冷えやすい、柔らかい体格
- 木の体質:やせ型で緊張が強いこともある
など、個人差があります。先天的に弱い部分は、後天的な食事で補うことが大切です。
6. 食事と鍼灸治療の関係
6-1. 鍼灸治療で吸収力を高める
鍼灸治療では、気・血・水の流れを整え、内臓(特に胃腸)の働きを改善して食べものからの栄養吸収を高めるサポートが期待できます。
- 胃腸の働きが上がると?
- 食べたものがしっかり栄養となり、体が温まる
- 疲労回復や免疫機能の向上が期待できる
6-2. 「食で治す」こともまた重要
「体は食べたものでできている」という言葉のとおり、質の高い食生活があれば鍼灸や薬に頼らなくとも健康を維持できる可能性があります。鍼灸は、あくまでも自然治癒力を底上げするためのサポートの役割と考えるとよいでしょう。
7. まとめ
- 旬の食材を活かす:野菜は季節ごとの性質を考慮し、体の冷えや余計な熱の除去などを調整する。
- 五味をバランスよく:特に甘味過多に注意し、酸・苦・辛・鹹(塩辛い味)も見逃さない。
- タンパク質・ビタミン・ミネラルを重視:先住民の知恵にもあるように、良質な肉・魚・野菜・海藻を積極的に取り入れる。
- 虚実・五行の体質を考慮:虚は「質の良いものを少量」、実は「食べすぎに注意」。
- 鍼灸治療との相乗効果:栄養吸収力を高め、気血水の流れを整えることで、さらに健康維持に近づく。
初心者の方には「難しく見える」かもしれませんが、基本は「旬の野菜・良質なたんぱく質(肉・魚)・適度な炭水化物」というシンプルな組み合わせを守ること。それを季節や体質に合わせて微調整するのが東洋医学の考え方です。日々の食事を少し意識して変えるだけで、体調の変化を実感できることも少なくありません。
もし「調子がいまいち良くならない」という場合は、鍼灸治療や専門家による食事指導などを合わせて試してみるのもよいでしょう。栄養がしっかり吸収され、体質に沿った食生活を続けることこそ、病気の予防や改善、そして健やかな生活への一番の近道です。