「ぎっくり腰」は日常生活のちょっとした動作(重い物を持つ、くしゃみをする、椅子から立ち上がるなど)がきっかけで発症することも多く、「魔女の一撃」とも言われるほど突然やってきます。痛みで身体が動かせなくなるため、非常に恐ろしい症状といえます。

ぎっくり腰は放置してはいけない

  • 急性腰痛は、発症してから早期に治療するほど回復しやすい 傾向があります。
  • たとえば「痛みが10ある状態」でも、急性なら適切な治療を数回受けるだけで半分ほど軽減できることが多いです。
  • 一方で、3~4日何もしないまま過ごすと、急性のはずのぎっくり腰が慢性腰痛へ移行する場合があります。慢性化すると痛みが長引き、根本的に治すための治療回数も増えてしまいがちです。

ストレスとの悪循環

腰の痛みが続くと、「またあの激痛が来るのではないか」という不安からストレスが増大し、そのストレスによってさらに痛みが強まるという悪循環に陥ることがあります。ぎっくり腰は単に「痛み」だけでなく、不安やストレスとも深く結びついていると考えられています。

東洋医学がとらえる「ぎっくり腰」の原因

東洋医学では、身体のバランスを崩す「邪氣(じゃき)」や、内臓の働きの不調によって腰痛が起こると考えます。ぎっくり腰は邪氣が身体に入り込んだ直後の状態です。直後ですから身体と邪氣は激しく戦います。ですので症状や痛みが大きくなりがちなのです。

  • 邪気(じゃき): 風邪や寒さ、ストレスによるエネルギーの乱れなどが身体に入り、「気」の流れを妨げる存在。
  • 邪氣が体の中に入ってすぐなら、鍼灸治療で「気」の流れを整え、邪気を排除しやすいです。
  • 邪氣が入ってから時間が経って慢性化すると、邪氣だけでなく「血(けつ)」の滞りや内臓機能への影響し、治りにくくなる場合もあります。

腰痛を内臓別にみる考え方

東洋医学では、腰痛を以下のように内臓機能との関連で捉える場合があります。ぎっくり腰も、この延長で見立てることが可能です。

  1. 腎(じん): 腰全体の痛み
    • 東洋医学でいう「腎」は“精力の貯金”とも呼ばれ、体力や生命力の源とされます。
    • 過度の疲労や睡眠不足、加齢などで腎の力が消耗すると、腰全体が重だるくなり、前屈など曲げる動作で痛みが出やすいのが特徴です。
  2. 肝(かん): 腰の奥深い部分の痛み
    • 肝は「解毒・代謝・血流の調整」に深く関わります。
    • お酒や薬、食品添加物を多用していると肝に負担がかかり、腰の深部が硬くなりやすいと考えられます。
    • またストレス過多・徹夜・激しい運動・スマホによる目の酷使などで肝のエネルギーが乱れると、ぎっくり腰が起こりやすいです。
    • 肝からくる腰痛は鍼灸治療が得意とする分野で、比較的早く痛みが軽減しやすいとも言われます。
  3. 脾(ひ): 背中からくる腰痛
    • 脾は「消化機能」と強く結びつきます。
    • 炭水化物の過剰摂取や偏食、精神的な悩み(思い悩む・考えすぎ)などで消化不良が続くと脾が弱り、背中がガチガチに硬くなって腰痛を引き起こすことがあります。
    • 特に女性に多く見られるパターンで、腰の左側や股関節に痛みが出やすいことがあります。

鍼灸でのぎっくり腰治療はなぜ効果的?

鍼灸では、身体中にある経絡(けいらく)と呼ばれる「気血の通り道」にアプローチします。急性の腰痛は「邪気が気を乱している」状態と考えられるため、鍼で気の流れを整え、お灸で温めて血流を促進することで、痛みの緩和や回復を助けます。

  • 急性期の痛みが強い場合
    痛みを訴える箇所に集中して施術を行うと同時に、邪気の入り口となっている経絡もあわせてケアすることで、症状の回復を早めます。
  • 慢性腰痛への移行を防ぐ
    数回の治療である程度痛みが軽減したら、再発予防のために根本的な体質改善を目指す施術を行うケースが多いです。肝・腎・脾などの内臓機能と気血の巡りを整え、腰への負担を減らしていきます。

ぎっくり腰を放っておくと慢性化に

一度ぎっくり腰を経験すると、そのまま適切なケアをしないまま日常生活を続け、数カ月から半年後に再発する方も珍しくありません。痛み止めだけでしのぐ方法は、一時的な痛みの緩和には有効ですが、根本原因は解消されません。
「また痛みが出るのでは?」という不安感がストレスを呼び、ストレスが腰痛の引き金になりかねない という悪循環を起こすことも多々あります。

よくあるご質問:ぎっくり腰編

Q1. ぎっくり腰に湿布はよくないのですか?

  • 負傷後24時間以内 の強い炎症期には、冷湿布が痛みの緩和に役立つことがあります。
  • ただし、それ以降も冷湿布を貼り続けると、冷えによる血行不良で回復が遅れる場合があるため注意が必要です。
  • 温湿布の温め効果は意外に弱く、貼ったときの成分(消炎鎮痛剤)による鎮痛効果がメインとされます。慢性化した腰痛にとっては補助的な手段であり、根本的な解決には至りにくいです。

Q2. ぎっくり腰はクセになりますか?

  • 何度も繰り返す人が多いのは事実ですが、「クセになる=必ず再発する」というわけではありません。
  • 再発を繰り返す背景には、痛みが落ち着いた時点で治療をやめてしまい、根本原因が残ったまま というケースが多いです。
  • しっかりと原因を見極め、鍼灸などで体質ごと改善していけば再発リスクは下がります。

Q3. ぎっくり腰を予防するにはどうしたらよいですか?

  • 内臓の疲れやストレスを溜めない
    • 腎が疲れている方は、夜更かしを控え、体力の“貯金”を取り戻しましょう。
    • 肝が負担を受けている方は、アルコール・薬・添加物を控え、スマホやPCの使用時間を見直します。
    • 脾が弱っている方は、炭水化物や甘い物の摂りすぎに注意し、食事を見直しましょう。
  • 適度な運動・ストレッチ
    腰回りの筋肉を動かして血行を保つことで、ぎっくり腰のきっかけとなる筋肉の硬直を防ぎます。
  • ストレスケア
    心理的な負荷は腰痛を悪化させる大きな要因のひとつです。十分な休息・趣味でのリフレッシュ・呼吸法などを積極的に取り入れてください。

Q4. ぎっくり腰は保険治療ができますか?

  • 整骨院では保険適用になることが多いです。
  • 鍼灸院でも施術者が整骨院の資格をあわせ持つ場合は、保険適用が可能なケースがあります。
  • 鍼灸師のみの場合は、医師の同意書を取得すれば保険が利く場合が多いです、事前に各院へ相談してみてください。

まとめ:ぎっくり腰は「早めの根本治療」が最大のカギ

  1. 急性のうちに治療すれば回復が早い
    • 何日も放置すると慢性化しやすく、治療期間も長引きます。
  2. ストレス対策も含めて根本的なアプローチを
    • 痛み止めや湿布だけに頼るのではなく、鍼灸による「気血の巡り」や「内臓の調整」を行うと再発リスクを下げやすくなります。
  3. 再発防止には日常生活の見直しが必須
    • 腎・肝・脾などの内臓や、栄養バランス、生活習慣、ストレス管理などを総合的に点検しましょう。

ぎっくり腰は誰にでも起こり得ますが、適切なタイミングで専門的なケアを受けることで、大きな痛みに悩まされるリスクをぐっと下げることができます。急に発症したからといってあわてず、専門家(鍼灸師、整骨院など)に相談し、根本治療と予防策をしっかり立てる ことが何よりも重要です。

執筆

徳田 和則(院長)

  • 鍼灸師・柔道整復師(整骨院)
  • 北海道漢方鍼汪会 会長
  • 東洋医学の理論を踏まえた腰痛・自律神経・肩こり・頭痛などの症状を専門に治療。
  • 患者さん一人ひとりが「自然に健康な身体」に戻れるようサポートし続けています。

腰痛の原因は人それぞれ異なります。ぎっくり腰にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。私たち専門家が、症状に合わせた最適な治療と予防指導をご提供いたします。痛みや不安から解放され、元気に日常生活を送れるよう全力でサポートいたします。