お尻から太もも、ふくらはぎへと続くしびれ。長引くと「神経そのものがおかしくなってしまったのでは」と不安になりますよね。
「もう治らないのでは」と思い詰めていた方でも、良くなっていくケースは少なくありません。
この記事では、東洋医学の鍼灸師である私が、坐骨神経痛をどのように見て、どのように治療するのかをお話しします。
この記事の要点
- しびれは神経の故障とは限らず、血流や栄養の不足によって神経が過敏になっている状態が多い
- 東洋医学では「足りないタイプ」と「使いすぎタイプ」に分けて治療する

坐骨神経痛が湿布と痛み止めで良くならない理由
最初にお伝えしたいのですが、病院での検査は大切です。重い病気が隠れていないかを確認してください。
そのうえで、私がまずお伝したいのは、「しびれているからといって、神経が壊れたとは限りません」ということです。
しびれは、その場所の血流や物質代謝が悪くなることで起きている場合があります。物質代謝とは、体の組織に栄養を届け、不要なものを回収する働きのことです。
神経そのものが故障しているのではなく、筋肉や神経の周囲に血液や栄養が十分に届かず、神経が過敏になっている状態と考えられるケースもあります。
実際、画像検査でヘルニアや狭窄があると言われた方でも、施術を重ねるうちに痛みやしびれが落ち着いていくことは少なくありません。
「腰椎が悪くなってしまったから、一生このままなのではないか」と、必要以上に思い詰めることはありません。
東洋医学では「足りない」のか「使いすぎ」なのかを見ます
私が坐骨神経痛の方を診るとき、入り口にするのは、「この方は足りないのか、それとも使いすぎなのか」という見方です。
東洋医学でいう陰陽、つまり体質や体の状態を大きく二つに分ける考え方です。
- しびれが強い方は、「足りないタイプ(陰)」
もともと虚弱で体力が少なめの方に多く、足先まで血液や栄養が十分に届いていないと考えます。 - 痛みが強い方は、「使いすぎタイプ(陽)」
体力があって動ける方に多く、体の使いすぎによって疲労がたまり、睡眠や休養が足りていないと考えます。
使いすぎタイプで坐骨神経痛が慢性化している方は、体の中に「汚れ」がたまっているような状態と考えます。
東洋医学では、肝は体を動かすときに深く関係する臓と考えます。体を動かしすぎて疲労の回復が追いつかなくなると、肝や胆の働きにも負担がかかり、体の中のめぐりがにごってきます。
このような疲労の蓄積が、なかなか取れない痛みの背景になっていると考えられます。
もう少し専門的に知りたい方へ
ここからは少し専門的な内容ですので、読み飛ばしていただいても大丈夫です。
経絡とは、東洋医学で考える気血の通り道です。坐骨神経痛に関係する経絡には、主に次の二つがあります。
- 太陽膀胱経:背中から足の裏側を通る経絡
- 少陽胆経:体の側面から足の外側を通る経絡
症状が出始めた頃は膀胱経に現れ、慢性化して症状が取れにくくなると胆経にも影響が及び、両方の問題が混ざり合っているケースもあります。
ただし、どちらの経絡の問題なのかは、痛む場所だけでは判断できません。私は、尺膚と呼ばれる前腕の皮膚の状態を診る方法や、脈診などを使って判断しています。
坐骨神経痛の鍼灸治療では、お尻や足に直接鍼をしません
意外に思われるかもしれませんが、私は坐骨神経痛の治療で、痛むお尻や足に直接鍼をすることはありません。
治療は、大きく二段階に分けて行います。
まず手足のツボを使い、現在弱っているところや、体質的に弱いところを補います。これは本治法と呼ばれる、体の土台を立て直すための治療です。
そのあと、うつ伏せになっていただき、後頭部、首、腰などにある督脈のツボを使って、骨盤がゆるむことを目指します。こちらは標治法と呼ばれる、現在現れている症状に対応するための治療です。
治療のポイントは、骨盤がゆるみ、少しずつ動くようになってきたかどうかです。
私の経験では、骨盤の動きが良くなってくると、太ももの裏側や外側、ふくらはぎに出ていた痛みやしびれも、少しずつ落ち着いていくことが多くあります。
そのため、毎回の施術では骨盤の状態を確認しながら、治療を組み立てています。
足のしびれは、治療直後より翌朝に変化することがあります
治療後の経過について、知っておいていただきたいことがあります。
施術のあと、腰が楽になったことは、その場で感じられるかもしれません。しかし、足のしびれや痛みが引いてくるまでには、少し時間がかかることがあります。
血流や栄養が、足のすみずみにまで届くのを待つ必要があるからです。
これは、冬に暖房のスイッチを入れたときと似ています。
スイッチはすでに入っています。しかし、部屋全体が暖まるまでには時間がかかります。
そのため私は、「明日の朝、起きたときに少し楽になっていれば、治療はうまく進んでいます」とお伝えしています。
通院の期間は、体力が充実している方では比較的短く、体力を消耗している虚証の方では、少し長くかかる傾向があります。
セルフケアについて
正直に言うと、坐骨神経痛には「これをすれば必ず良くなる」というセルフケアの決定打は、なかなかありません。
ストレッチについては、ここまで読んでくださった方であれば、すでに何度も試していると思います。そのため、この記事では繰り返しません。
そのうえで、ありきたりに聞こえるかもしれませんが、睡眠時間を長く取ってください。
これは本当に大切です。
坐骨神経痛の背景には、疲労の蓄積があることが少なくありません。疲労を回復させる時間、つまり眠っている時間を増やすことが、そのまま治療の土台になります。
まとめ|「もう治らない」と決めるのはまだ早いです
- しびれがあるからといって、神経そのものが故障しているとは限りません
- 血流や栄養の不足によって、神経が過敏になっている場合があります
- 画像検査で異常を指摘された方でも、痛みやしびれが落ち着いていくケースは少なくありません
- 東洋医学では「足りないタイプ」と「使いすぎタイプ」を見極めて治療します
- 手足のツボを使って体の土台を整え、骨盤がゆるむことを目指します
様子見を続けたまま、不安を抱えている方は、現在の症状を一度お聞かせください。
LINE相談は24時間受け付けています。「これは坐骨神経痛でしょうか?」という段階のご質問でも大丈夫です。
よくある質問
坐骨神経痛に鍼灸は効きますか?
私の経験では、骨盤が動くようになってくると、痛みやしびれが落ち着いていく方は少なくありません。
ただし、効果の感じ方や回復までの期間には個人差があります。とくに、しびれは痛みよりも回復に時間がかかる傾向があります。
どのくらいの期間で良くなりますか?
体力が充実している方は比較的短く、体力を消耗している方は長くかかる傾向があります。
症状の強さや続いている期間によっても異なるため、初回の施術後に、体の状態を踏まえてご説明します。
病院でヘルニアや脊柱管狭窄症と言われましたが、鍼灸を受けられますか?
病院で検査や診断を受けている方も、鍼灸を受けていただけます。
画像検査で異常があると言われた方でも、痛みやしびれが落ち着いていくケースを経験しています。病院での検査や治療と並行して受けていただいて構いません。
