ぎっくり腰の原因は、腰にある——そう思っていませんか?
私は札幌で東洋医学専門の鍼灸院をしていますが、ぎっくり腰の方を診ていると、腰そのものだけが原因というケースはむしろ少なく、「背中」や「首」が隠れた原因になっていることがよくあります。
この記事の要点
- ぎっくり腰は、動かなくなった腰と、背中・首の「塊」との引っ張り合いで起こります。どちらか一方が緩めば、体は動き出します
- 症状の激しさと治りにくさは別ものです。急性のぎっくり腰は、1回の治療で動けるようになり、2〜3回で日常の動きに戻る方が多いです
- 当院(札幌駅から徒歩2分)では、急性の腰痛は保険での鍼灸治療が可能です。来られる状態なら、当日のご来院で構いません
突然の激痛で動けなくなると、「体に何か大変なことが起きたのでは」と不安になりますよね。でも、仕組みがわかれば、ぎっくり腰はやみくもに怖がる症状ではありません。この記事では、私が臨床で見てきた「ぎっくり腰の本当の仕組み」と、当院での治療・予防についてお話しします。

ぎっくり腰で動けなくなる本当の仕組み——原因は腰だけではない
ぎっくり腰とは、重い物を持ち上げる・くしゃみをする・椅子から立ち上がるといった何気ない動作をきっかけに、突然起こる急性の腰痛のことです。「魔女の一撃」とも呼ばれるほど、予告なくやってきます。
ぎっくり腰で一番の原因になるのは、腰や骨盤が動かなくなることです。ここまでは、みなさんのイメージ通りだと思います。
ただ、実際に診ていると、それだけでは終わらないケースがほとんどです。動かない腰に対して、背中や首にできた「拘縮(こうしゅく)」——つまり筋肉が固まってできた「塊」——がピンと突っ張って、引っ張り合いを起こしている。この綱引きのような状態こそが、体をまったく動かせなくする正体だと私は考えています。
綱引きは、どちらか一方が緩めば終わります。ぎっくり腰も同じで、腰側か、引っ張っている背中・首側か、どちらか一方でも解ければ動かなかった体は動き出す——これが、長年ぎっくり腰を診てきた私の実感です。
そしてもうひとつ大事なのは、引っ張っている場所も原因も、人によって違うということです。だから「ぎっくり腰にはこの体操」「このツボ」といった一律の対処では、うまくいったりいかなかったりするのです。
ぎっくり腰の原因はどこに?——東洋医学の「内臓別」の見立て
東洋医学では、筋肉の塊や突っ張りを、内臓の疲れと結びつけて見立てます。ぎっくり腰でよく診るのは、次のパターンです。
【腰側】肝臓タイプ——腱が突っ張って「伸びない」腰
腰の筋腱(すじ)が突っ張って、体が伸びなくなるタイプです。仰向けには普通になれるのに、体を伸ばす姿勢——うつ伏せ——がつらい方は、だいたいこのタイプです。
東洋医学の肝臓は「解毒」と「筋腱」を受け持ちます。お酒・薬・食品添加物で解毒の仕事が増えすぎたとき、そして目の使いすぎ(スマホ・PC)や睡眠不足で肝臓が消耗したときに、腱の突っ張りとしてあらわれます。
正直に言うと、この肝臓タイプの筋腱の突っ張りは、私がめちゃめちゃ得意にしている分野です。鍼灸との相性がよく、比較的早く痛みが軽くなる方が多いです。
【腰側】腎臓タイプ——前屈で痛む、重だるい腰
腰全体が重だるく、前かがみになる動作で痛むタイプです。東洋医学の腎臓は「体力の貯金」——生まれ持った生命力の蓄え——を受け持ちます。過労・睡眠不足・加齢でこの貯金が減ってくると、腰全体にきます。
このタイプのぎっくり腰は、体力の貯金が減るところまで進んでいる、つまりかなり慢性が進んだ状態です。ですから正直にお伝えすると、治療には時間がかかります。
【引っ張る側】脾臓タイプ——背中の「塊」という隠れた原因
ぎっくり腰の隠れた原因として多いのが、背中です。東洋医学の脾臓は消化を受け持ち、食べすぎ・甘いものの取りすぎ・思い悩みで弱ると、背中がガチガチに固まります。この背中の塊が腰を引っ張って、ぎっくり腰の片棒を担ぎます。
【引っ張る側】首・肩甲骨——これも肝臓
首や肩甲骨まわりの筋腱が突っ張って固まるのも、肝臓の消耗と関係します。「腰が痛いのに、なぜ首?」と思われるかもしれませんが、体はひとつながりです。首・肩甲骨の突っ張りが、背中越しに腰と引っ張り合っていることは珍しくありません。
ぎっくり腰が起きやすい季節——引き金は「春の風」と「冬の雪かき」
体に塊や突っ張り(素地)があっても、毎日ぎっくり腰になるわけではありません。引き金を引くものがあります。東洋医学ではそれを邪気と呼びます。邪気(じゃき)とは、寒さ・強い風・天候の不順(長すぎる梅雨など)・ストレスといった、体の調子を外から乱す要因のことです。
札幌で治療をしていると、ぎっくり腰が増える時期ははっきりしています。春と、冬です。
春——立春から、体は動き出す
東洋医学では、冬の体は冬眠に近い「お休みモード」で、立春(2月4日)を境に活動モードへ切り替わっていくと考えます。ところが春は、風の強い日が断続的に続く季節でもあります。「昨日も今日も風が強いな」という時期、動き出そうとする体のなかで、固まったままの場所が2箇所以上で引っ張り合いを起こす——これが春のぎっくり腰です。おもしろいことに、冬にどれだけ風が強くても、ぎっくり腰はあまり起きません。体がまだお休みモードだからです。

冬——雪かきと重労働
雪かきの季節は、単純に腰を酷使します。腰の疲労に背中の塊が重なっていると、ぎっくり腰になります。
ただ、同じぎっくり腰でも、雪かきの方は「原因は雪かきだ」と自分でわかっているので、そこまで不安になりません。不安が大きいのは、心当たりがないのに突然動けなくなった方です。
当院に来られる方も「何もしていないのに、なぜ」と混乱されていることがよくあります。原因が見立てられれば、ぎっくり腰は怖い症状ではありません。
当院でのぎっくり腰治療——実際の流れ
問診——多分大丈夫と院長は確信している
まず問診で、急性のぎっくり腰なのか、慢性の腰痛が下敷きにあるのかを見分けます。
正直に打ち明けると、「これは急性のぎっくり腰だな」とわかったとき、私は「大丈夫だ治りそう」と少しほっとしています。
変なことを言うようですが、症状の激しさと、治りにくさは別ものなのです。
普通は「こんなに痛いのだから、体によほど悪いことが起きているに違いない」と思ってしまいますよね。
実際は逆で、急性のぎっくり腰は早めに治療すればスッと良くなる方が多く、慢性腰痛のほうがじわじわとしか治らないので、治療としては長丁場になります。
ただし、慢性の腰痛が進んだ土台の上にぎっくり腰が乗っているケースもあり、その場合は「すぐ良くなりますよ」とは言えません。そこを見分けるのが問診です。
本治法——体質から整える
次に、脈・お腹・筋の張りなどから、肝臓・腎臓・脾臓のどこが疲れているかを見立て、体質から整える治療(本治法・ほんちほう)をします。足のツボを使うので、靴下を脱いでいただきます——この靴下が、あとで小さな役割を果たします。
うつ伏せで、突っ張りを解く
本治法のあと、うつ伏せになっていただき、どこからどこが突っ張っているのかを確かめて、筋張っているところを鍼で緩めていきます。
実は、うつ伏せになる動作そのものが診断になっています。寝返りは体の軸をひねる動作で、体の中心=腰が動かないとできません。仰向けは平気なのにうつ伏せがつらい方は、その時点で「伸びないタイプ(肝臓)」とわかります。どうしてもうつ伏せになれない場合は、横向きで治療します。
仕上げにもう一度本治法——そして靴下
最後に仰向けに戻り、もう一度本治法で仕上げます。このとき、実は寝返りがさっきより少しできるようになっているのですが、ご本人は痛みで必死なので気づいていません。治療直後も「うーん、まだ痛いな」という顔をされる方がほとんどです。
変化に気づくのは、帰り支度のときです。脱いでいた靴下を履こうと足を上げた瞬間、立ち上がった瞬間に、「あれ?」という顔をされます。私はこの瞬間が、ちょっと楽しみだったりします。
回復の目安と、来院の目安
- 1回目の治療で「動ける」ようになる方が多いです(痛みはまだ残ります)
- 2〜3回で、違和感は残るものの日常の動きに戻っていく方がほとんどです
- 個人差はありますが、半分以上の痛みが取れる方が多い、というのが実感です
来院ですが、なんとか動けるなら早いほうがいいです。実際には、ご主人や奥さんに肩を借りて、ゆっくり来院される方がたくさんいらっしゃいます。そういう方も、帰りはご自分の足で、来たときより楽に帰られることが多いです。
ただし、まったく動けない場合は無理は禁物です。移動で無理をすると悪化しかねないので、まずはLINEやお電話でご相談ください。
ぎっくり腰を予防する3つの方法——ポイントは体質で変わる
生活習慣の一般論(お酒を控えて、睡眠をとって……)は、みなさん「そんなの分かってる」と思うでしょうから、私が臨床でおすすめしている予防を3つに絞ってお話しします。
①「引っ張られる感覚」という前兆を知っておく
一度治療した方には、「ここに違和感や引っ張られる感じが出たら、すぐ来てくださいね」と、その方の「要注意ポイント」をお伝えしています。ぎっくり腰は、塊の引っ張り合いが限界に達したときに起きます。引っ張られる感覚の段階で緩めてしまえば、激痛までいかずに済むことが多いのです。実際、一度ぎっくり腰を経験された方ほど、前兆の段階で来院されるようになります。
②季節の変わり目の前に、体を整えておく
毎年春にぎっくり腰を起こしていた方に、冬のうちに「毎年春にやるんだから、今のうちに腰を直しておきましょう」とお話しして治療したところ、その年の春は何も起きずに済んだ——ということがありました(個人の例です)。春に繰り返している自覚のある方は、立春の前がおすすめのタイミングです。
③繰り返す方は、予防的な通院という選択肢
毎晩ウイスキーを楽しまれる方で、年に3〜4回ぎっくり腰を起こし、そのたびに来院されていた方がいました。あるとき月1〜2回の予防的な通院に切り替えたところ、もう3年ほどぎっくり腰を起こしていません(これも個人の例です)。お酒や生活を無理に変えるより、定期的に体の突っ張りをリセットするほうが続けやすい、という方は少なくありません。
そのうえでお伝えしたいのは、予防のポイントは体質によって変わるということです。一般論として多いのは、肝臓タイプなら目の使いすぎと睡眠不足、脾臓タイプなら消化不良——特に砂糖・お菓子の取りすぎとタンパク質不足です。先ほどの「内臓別の見立て」の章も、ご自分に当てはめながら読み返してみてください。自分はどこに気をつければいいのか知りたい方は、来院の際に遠慮なく聞いてください。
ぎっくり腰のよくある質問
Q1. ぎっくり腰は湿布だけで治りますか?
炎症が強い時期は、冷湿布が痛みを楽にしてくれます。温湿布ももちろん構いません。ただ、どちらも貼り薬の消炎鎮痛成分が効いているもので、腰と背中の引っ張り合いそのものが解けるわけではありません。湿布でしのいでいる間に自然と治まればそれでよいのですが、塊が残ったままだと「また起こしそうな体」のままになりやすい、というのが正直なところです。
Q2. ぎっくり腰はクセになりますか?
「クセになる」というより、原因の塊が残ったままだと繰り返しやすい、というのが実際のところです。何度も繰り返している方は、痛みが引いた時点で原因が解決したわけではない、と考えてみてください。「引っ張られる感覚」が出たとき、あるいは季節の変わり目の前に早めにお越しいただくのが、いちばんの再発対策です。
Q3. ぎっくり腰の鍼灸治療に保険は使えますか?
当院では、ぎっくり腰(急性の腰痛)は保険での治療が可能です。一般の鍼灸院では医師の同意書が必要になることが多いのですが、私は整骨院の国家資格(柔道整復師)を併せ持っているため、急性の腰痛は保険で対応できます。詳しくはお気軽にお問い合わせください。
Q4. ぎっくり腰で動けないときは、どうすればいいですか?
まず、無理に動かないでください。来られる状態なら、当日でも早めの治療をおすすめします。ご家族に肩を借りて来院される方も多くいらっしゃいます。まったく動けないほどの場合は、移動でかえって悪化しかねないので無理は禁物です。LINE(24時間受付)やお電話で、まず状況をご相談ください。
まとめ——ぎっくり腰は、怖がるより「解く」
- ぎっくり腰の原因は腰だけではありません。背中や首の塊との「引っ張り合い」が正体で、どちらか一方でも解ければ体は動き出します
- 症状の激しさと治りにくさは別ものです。急性のぎっくり腰は、むしろ回復の早い症状です
- 再発予防のカギは、「引っ張られる感覚」という前兆と、季節の変わり目(特に春)の前のケアです
今まさに痛くてこの記事を読んでいる方へ。当院は札幌駅から徒歩2分です。来られる状態なら、当日でもどうぞ。動けるか不安な方、来院を迷っている方は、LINEでのご相談が24時間できますので、まずは状況をお知らせください。
※本文中の「肝臓」「腎臓」「脾臓」は、東洋医学での体の働きの呼び名で、西洋医学の臓器そのものを指すわけではありません。健康診断で肝臓や腎臓に問題がなくても、東洋医学の見立てでは「肝臓の疲れ」とみることがあります。


