におい、味、朝の空腹感。昨日まで平気だったものが、突然つらくなる。
「私の体、どうなってしまったんだろう」と不安になっていませんか。その症状には、東洋医学から見るとちゃんと意味があります。

つわりは「体の大掃除」のサインです
妊娠初期のつわりは、吐き気や食欲不振、においに敏感になるなど、症状がさまざまです。長く続くと「体がおかしくなってしまったのでは」と心配になりますよね。
でも私は、つわりを悪いものだとは考えていません。「赤ちゃんが育つ準備として、体の中をきれいにしよう」という、体からのサインだと考えています。
吐き気は「出す力」が追いついていない状態
東洋医学では、呼吸のうち「吐く」働きが十分でないときに吐き気が起こる、と考えます。体にたまった不要なものを出しきれない状態が続くと、体は吐き気という形でSOSを出すのです。
実際、つわりで来院される方の体を診ると、頭や右の肩甲骨、胸郭(=肋骨で囲まれた胸のかご)が硬くなっている方が多くいらっしゃいます。胸郭が硬いと呼吸が浅くなり、「吐く」力が落ちて、吐き気につながるのです。
ですから私は、吐き気を無理に止めることよりも、体がきれいになるのを手助けすることを優先します。無理に抑え込むと、体が出したがっているものが中に残ってしまう恐れがあるからです。それが、つわりを根本から和らげる近道だと私は考えています。
つわりを重くする3つの要因
つわりは妊娠特有のホルモン変化によるところが大きいといわれますが、そこに「体を濁らせる要因」が重なると、悪化することがあります。
- 古い食材・古い油——酸化した油や食材は体の負担になります。妊娠中は特に敏感になるため、台所仕事そのものが吐き気の引き金になる方もいます。
- ストレスや呼吸の浅さ——緊張が強いと呼吸が浅くなり、体から「余分なもの」を吐き出しきれません。
- 便秘・腸内環境の悪化——腸に滞った老廃物が毒素を再吸収し、肝臓に負担をかけます。
妊娠と「肝臓」の深い関係
東洋医学では、妊娠・出産には母体の肝臓の力が深く関わると考えます。
肝臓は、体の「解毒」を担当する臓器です。体の中が汚れているときに妊娠すると、肝臓は「赤ちゃんを育てる仕事」と「解毒の仕事」の二役をこなさなければならず、負担が大きくなります。
その負担を減らすために、体が自分をきれいにしようとして出てくるのが吐き気=つわり。これが当院の見立てです。
日常でできる「肝臓を休ませる」4つの工夫
1. 夜11時〜午前3時はしっかり眠る
東洋医学では、肝臓の働きが最も活発になるのは夜11時〜午前3時とされています。この時間に眠ることで、肝臓が十分に休息し、体の浄化がスムーズに進みます。眠れなくても、目を閉じて横になるだけで肝臓を助けることにつながります。
2. 目を使いすぎない
東洋医学には「目は肝とつながる」という考え方があります。長時間の読書やパソコン、とくに夜のスマホは、肝臓を静かに消耗させます。昔から「産後に目を使いすぎるとうつになりやすい」といわれてきたのも、この目と肝臓のつながりからです。
3. 重いものを持たない
重いものを持ち上げる動作は、意外にも肝臓の力を多く使います。妊娠中はなるべく負荷を減らし、家事や仕事は周りに手伝ってもらいましょう。「頼るのが苦手」という方こそ、いまは頼りどきです。
4. 古い油を避けて、梅干しを味方に
古くなった油は、体の中で酸化ストレスを増やします。料理の油は新鮮なものに替え、調理中は換気を。梅干しのような抗酸化作用のある食材は肝臓の働きを助けるとされ、つわりの緩和に役立つ場合があります。
当院の鍼灸でできること
当院では、妊娠中の方に、肝臓をサポートして経絡(けいらく=気血の通り道)の流れを整える施術を行っています。吐き気を無理に抑え込むのではなく、体の「出す力」を高めて、不要なものがスムーズに出ていくよう導く——これが治療の柱です。
頭や肩甲骨、胸郭に硬さがある方には、そこをゆるめて呼吸が深く入るように整えていきます。
「妊娠中に鍼をして大丈夫?」と心配になるかもしれません。当院の鍼はごく繊細な刺激で、初めての方から「鍼を打っているかどうかもわからなかったのに、なんとなく体が軽くなった」という感想をいただくこともあります(個人の感想です)。
自宅でできるお灸——裏内庭(うらないてい)
妊娠中のつわりには、「解毒」のツボとして裏内庭がよく使われます。
場所は、足の人差し指を曲げたとき、指先が足裏にあたるところ。市販のせんねん灸などを1〜3回、心地よい温かさを感じる範囲で繰り返すと、体の余分なものを出す手助けになるでしょう。
おまけ——妊娠中の定番ツボ「三陰交(さんいんこう)」
もうひとつ、おまけに三陰交も紹介しておきます。こちらは解毒のツボではありませんが、妊娠中の体調を支える定番のツボです。
場所は、内くるぶしのいちばん高いところから指4本分上、すねの骨のうしろ側のきわ。裏内庭と同じように、心地よい温かさを感じる範囲でお灸をどうぞ。
まとめ——つわりは「抑える」より「導く」
- つわりは正常な反応。赤ちゃんを迎える前に、不要なものを出そうとする体のシグナル。
- 生活で肝臓を休ませる。夜更かし・目の使いすぎ・重いもの・古い油を減らすだけでも、つわりが軽くなる可能性があります。
- 鍼灸で肝臓と経絡をケア。吐き気の原因に働きかけ、自己治癒力を高めるアプローチ。
- お灸でセルフケア。解毒のツボ・裏内庭を中心に、妊娠中の定番・三陰交も。
つわりのつらい時期は、赤ちゃんの成長に向けて体が大きく変化している証拠でもあります。おひとりで耐えるより、体の声を一緒に読み解きながら、少しでも穏やかに過ごせるようにしていきましょう。
※この記事でいう「肝臓」は、東洋医学でいう「肝」の働きを指しています。西洋医学の肝臓と重なる部分もありますが、まったく同じものではなく、東洋医学ではもう少し広い働きを受け持つものとして考えます。
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