
はじめに
東洋医学、とりわけ古典医学をベースにした鍼灸(しんきゅう)は、自然界の移ろいと人間の身体が深く結びついているという考え方を大切にします。徳田漢方はり院では、陰陽五行説(※1)や二十四節気(※2)の概念を用いて、患者さんの身体の状態を観察・分析し、季節の変化に合わせた治療方針を立てています。
本記事では、この二十四節気の概要と東洋医学の基本的な考え方、そして鍼灸治療がどのように関係するのかを、初心者の方にもわかりやすい形で解説いたします。
(※1)(※2)一番下に用語解説があります
二十四節気とは
■ 二十四節気の成り立ち
- 農業のための太陽暦
二十四節気は、約2500年前の中国で農業の指針として作られた暦法です。当時は月の満ち欠けを基準とした「旧暦(太陰暦)」が使われていましたが、太陽の動きとズレが生じやすかったため、農事の目安としては不便でした。そこで、太陽の通り道(黄道)を24に分割して、その位置に応じて季節を知る仕組みが考案されたのです。 - 旧暦ではなく“太陽暦”に連動
二十四節気は、一年を365日とする太陽暦と連動します。現代のカレンダー(グレゴリオ暦)とほぼ同じリズムで動くため、たとえば「立春」は毎年2月4日頃にほぼ固定され、わずかに1日の前後がある程度です。このように、自然界の太陽運行を細かく反映していることが、二十四節気の大きな特徴といえます。
■ 二十四節気の名称
一年を12の月と、それをさらに陰陽の概念で2分することで、合計24の節気に分割します。皆さんがよく耳にされるのは「立春」「秋分」「夏至」「冬至」などですが、それ以外にも以下のような節気があります。
- 2月4日 立春
- 2月19日 雨水
- 3月5日 啓蟄
- 3月20日 春分
- 4月4日 清明
- 4月20日 穀雨
- 5月5日 立夏
- 5月21日 小満
- 6月5日 芒種
- 6月21日 夏至
- 7月7日 小暑
- 7月22日 大暑
- 8月7日 立秋
- 8月23日 処暑
- 9月7日 白露
- 9月23日 秋分
- 10月8日 寒露
- 10月23日 霜降
- 11月7日 立冬
- 11月22日 小雪
- 12月7日 大雪
- 12月21日 冬至
- 1月6日 小寒
- 1月20日 大寒
それぞれの節気には、自然界の変化や農作業の目安が名称にも表れています(たとえば、啓蟄=土中の虫が活動を始める時期)。これらの呼び名から、自然が刻む微妙な移ろいを感じ取ることができます。
東洋医学が重視する「天人合一」と自然治癒力
■ 天人合一説(てんじんごういつせつ)とは?
東洋医学の基本に「天人合一説」という考え方があります。これは、「天(自然界)と人間は一体である」という意味であり、自然の法則に身体を合わせることが健康維持の鍵だとする理論です。自然が移り変わるのと同じように、人の身体や心も変化し続けます。したがって季節の変動を見極め、それに順応する生活や治療を行うことが重要です。
■ 二十四節気を用いた身体の変化の捉え方
- 約15日ごとに状態が変化
一つの節気はおよそ15日間隔でめぐってきます。中国の古医書にも、季節の変化に合わせて人間の“脉(みゃく)”や“気血”のバランスが段階的に変動すると記されています。こうした理論にもとづいて、徳田漢方はり院では「同じ病気や症状でも、節気が変わるタイミングで治療方針や使うツボを変える」ことが多々あります。 - 自然治癒力を高める
二十四節気のリズムに合わせる形で身体を整えていくと、本来備わっている自然治癒力がより発揮されやすくなります。この考え方は、現代のライフスタイルでも応用可能で、たとえば急激な気温変化や湿度の変化に対して体調を整えやすくするメリットがあります。
鍼灸医学と二十四節気の関係
■ 鍼灸の歴史的背景
東洋医学の長い歴史の中でも、鍼灸は特に古い時代から受け継がれてきた治療法です。紀元前に書かれたとされる中国の古典医学書(黄帝内経など)では、体質や症状を診る際に季節の特徴を考慮するよう強く説かれています。当院の施術方針も、こうした伝統理論を実践的に活用し、一人ひとりの状態に合わせて治療してきた数千年分の知見をもとにしています。
■ 季節とツボ選択のポイント
- 春(立春〜立夏前): 五臓六腑のうち“肝”の機能が活性化する時期とされ、気分の乱れやイライラなどが起こりやすい時期。肝の働きを調整するツボを中心に施術し、精神的安定を図ります。
- 夏(立夏〜立秋前): 暑さで“心”に負担がかかりやすく、熱中症やだるさが増えます。熱を冷まし、身体に溜まった余分な熱を解放するツボが活躍します。
- 秋(立秋〜立冬前): 肺や呼吸器系の不調(咳、乾燥など)が出やすいので、肺を潤し、免疫力を高めるツボをメインにします。
- 冬(立冬〜立春前): 寒さによる血行不良や冷えが進行しやすい季節。腎を温め、寒さから身体を守るツボを重視します。
上記のように、大まかな四季の区分だけでなく、二十四節気の細かなリズムでも治療戦略を変化させるのが伝統的な鍼灸の特徴です。
季節の「移り変わり期間」を意識する
東洋医学では「季節が完全に変わる前に準備をする」ことが重要とされています。実際に暦の上では、春は2月4日の立春から始まりますが、体感的にはまだ寒い日が続きます。この“ズレ”こそが重要なポイントであり、「春を迎えるための身体づくり」を徐々に進める時期と捉えます。
- 例:2月4日(立春)
まだまだ寒い時期ではありますが、東洋医学ではここから“春のエネルギー”が高まり始めると考えます。急に春用の服装に変えろということではなく、「日差しが少しでもある日は外で身体を動かす」「冬の冷えを引きずらないよう、ストレッチや軽い運動を取り入れる」といった対策を行い、体と心の両面で春へと移行する準備をします。
実践的な養生のヒント
- 食事面:
- 季節に合った旬の食材を取り入れる(例:寒い時期は根菜を、春先は新芽系の野菜を積極的に)。
- 過度な冷たい飲食や甘味を控え、内臓を冷やさないよう注意する。
- 生活リズム:
- 二十四節気のサイクルをきっかけに、就寝時間や起床時間を見直す。
- 気温差が激しい時期には、体温調節しやすい服装を心がける。
- 鍼灸ケア:
- 季節の変わり目にあわせて定期的に鍼灸を受けると、自然治癒力を高めやすい。
- 同じ症状でも、時期によって適切なツボや治療方針が変化するため、プロに相談するのがおすすめ。
まとめ:自然のリズムに寄り添い、身体を整える
二十四節気という考え方は、かつて農業中心だった社会の“自然暦”として誕生し、現代においても私たちの暮らしや健康を見直す有力な指針となります。東洋医学は「天人合一説」に基づき、身体と自然が調和することで本来の健康を取り戻せると考えています。
私たち徳田漢方はり院では、2000年以上にわたり受け継がれてきた中国古典医学の知恵を活用し、季節や気候の変化に沿った鍼灸治療を大切にしています。毎年同じように見える四季も、実は日々刻々と変化しており、その細やかな移ろいに体を合わせていくことで、より自然に、より健康的な生活を送りましょう。
用語解説
- (※1)陰陽五行説: 万物を陰と陽のバランスで捉え、さらに木・火・土・金・水の五要素(五行)で説明する東洋哲学的な理論。人体の機能や季節の動きを説明するのに用いられる。
- (※2)二十四節気: 太陽の通り道を24に分割し、約15日刻みで季節を捉える暦法。立春や夏至などの名称が有名。