冷えのぼせの治療|足は冷えるのに顔がほてる理由を東洋医学で見立てる
あなたの冷えは、どれに当てはまりますか。
- 冬だけ冷える
- 起きて動いていると、冷えを忘れている
- 足は冷たいのに、顔はほてる
どれに当てはまるかで、冷えの原因は違います。
私は札幌で東洋医学専門の鍼灸院をしています。冷えは「体質だから仕方ない」とあきらめられがちですが、原因を分けて見ていくと、手の打ちどころはちゃんと見えてきます。この記事では、私が冷えをどう見立て、当院で何ができるのかをお話しします。足は冷たいのに顔だけほてる「冷えのぼせ」の正体についても、後半でお話しします。

冷えの原因は2つ——「めぐり」の不足と「中身」の不足
当院では、冷えの大きな原因を2つに分けて考えます。
- 血流不足 …… 血の「めぐり」が足りない
- 栄養不足 …… 血の「中身」が足りない
東洋医学では、体を気・血・水(き・けつ・すい=体を動かすエネルギー・血液・水分)のめぐりで捉えます。冷えは、このうち「血」が、めぐりか中身のどちらかで足りていないサイン——これが私の見立ての出発点です。
血流不足の原因には、骨盤が動かない・運動不足・精神的な緊張・急な冷え込みに対応できない、などが多く、栄養不足の原因には、炭水化物や甘い物の過多・たんぱく質の不足・胃腸が弱って吸収できない、などが多いです。一つずつ見ていきましょう。
血流不足による冷え——「めぐり」が足りない
骨盤の関節が動かない人は、足が冷える
骨盤の関節は動かないように見えますが、実は体の緊張と弛緩に合わせて、5ミリほど開いたり閉じたりしています。
骨盤まわりの筋肉や靭帯が硬くなると、仙腸関節(せんちょうかんせつ=骨盤の後ろ側にある関節)の動きが悪くなり、柔軟性が落ちます。骨盤は下半身への血流の通り道ですから、ここが硬いと足の冷えに直結します。
女性の生理周期と骨盤の関係
女性の体は、生理周期と骨盤の開け閉めがリンクしています。この開閉がなくなるとコリが生まれ、血流が悪くなります。体が硬くなると緊張状態が続き、さらに冷える——という悪循環です。
運動不足による冷え——「冬だけ」「動くと忘れる」がサイン
下半身だけでなく手足まで冷えるときは、運動不足が背景にある場合があります。特に「冬だけ冷える」「起きて動いていると冷えを忘れる」という方は、体が熱を作る量そのものが足りていないのかもしれません。
精神的な緊張が続くと、手足が冷える
精神的な緊張状態が続くと、手足が冷えることが多いです。
緊張で内臓のこわばりが高まると、脳は「内臓がピンチだ」と判断して、内臓へ余分に血流を送ります。そのぶん手足は血流不足になり、冷たくなるのです。
東洋医学では、これを気(=体を動かすエネルギー)のめぐりの滞りとして捉えます。気がめぐらなければ血もめぐりません。緊張の強い方は呼吸も浅くなっていることが多く、これも血のめぐりを落とす一因です。後でお話しする鍼灸治療で「呼吸を深くすること」を大事にしているのは、このためです。
また、体の緊張で筋肉の使い方のバランスがくずれると、姿勢の乱れにつながり、これも血流を悪くします。
急な冷え込みに対応できないとき——秋からの冷えと膀胱
急な冷え込みに体がついていけないときも冷えます。秋分を過ぎたあたりから冷えを感じ始めたら、冷え対策の始めどきです。
この時期は空気が乾燥します。残暑で汗をかき、その汗が乾燥で急に冷えると、体は芯から冷えてしまいます。また、寒くなって急に汗をかかなくなると、体はそのぶんの水分を泌尿器から出そうとします。このとき膀胱が弱い方は、膀胱炎になったり、むくみやすくなったりします。
東洋医学では、体の水分は「三焦(さんしょう=全身の水分を動かして回すはたらき)」がめぐらせ、腎臓が調節していらない分を膀胱へ渡し、膀胱が外へ出す、という役割分担で考えます。汗をかかなくなる秋は、この排泄チームの仕事が急に増える季節。膀胱の弱い方がこの時期に不調を起こしやすいのは、そのためと考えると筋が通ります。めぐらずに停滞した水分は、花瓶の水を替えずにいると悪くなるのと同じで、体に良い働きをしません。
栄養不足による冷え——「中身」が足りない
体の働きが活発で、血のめぐりが足りていても、血の中身が不足していると冷えます。血の中身の不足とは、栄養不足のことです。
現代人に多いのは「隠れ栄養失調」です。炭水化物や甘い物の過多、たんぱく質の不足、胃腸が弱って吸収できない、ダイエット——こうしたことが隠れ栄養失調を生みます。
砂糖や炭水化物のとりすぎによる冷え
甘い物や炭水化物のとりすぎは、毛細血管の糖化(とうか=血管に糖が付着して硬くなること)をまねき、冷えの原因になります。普通の血管なら修復されますが、毛細血管はとても細いので、修復が間に合わずにこわれてしまうことがあります。毛細血管の血流不足が起き、冷えが出てくるのです。
また、甘い物で血糖が急激に上がると、それを下げようとしてインシュリンが出すぎることがあります。今度は血糖が下がりすぎて、血糖を上げるホルモン——副腎皮質ホルモン、アドレナリン、甲状腺ホルモンなど——が総動員されます。この状態が続くと、副腎の疲労やホルモンの不足から冷えが出るほか、体がだるい・疲れやすい・低血圧といった自律神経の症状も出てきます。
東洋医学でも、甘い物のとりすぎは胃腸(東洋医学でいう「脾(ひ)」)を弱らせると考えます。次の項でお話しする「吸収できない冷え」の入り口にもなるわけです。
たんぱく質の不足による冷え
体はおよそ60%が水分、15%がたんぱく質です。筋肉や五臓六腑はもちろん、骨も髪も、人間の体はほぼたんぱく質と水分でできています。
たんぱく質が少なくなると、そのぶん水分の割合が増え、むくみやすくなります。特に血液中のたんぱく質が少なくなると、栄養の受け渡しがうまくいかず、冷えてきます。お肉、お魚をしっかり食べていただければと思います。
胃腸が弱って吸収できない
せっかく食べても、胃腸の機能が弱って栄養を十分に吸収できなければ、血の中身は増えません。胃腸が弱る原因としては、冷たい物の飲みすぎ・食べすぎ、緊張やストレス、糖質過多による胃腸の毛細血管の糖化、などが考えられます。
冷えているのに、顔だけほてる——「冷えのぼせ」の正体
「足は氷のように冷たいのに、顔や上半身だけカーッと熱くなる」というご相談もあります。東洋医学ではこれを上熱下寒(じょうねつげかん=上半身に熱がこもり、下半身が冷えている状態)と呼びます。
熱には上へ昇る性質があります。下半身のめぐりが悪くなると、行き場を失った熱が上にたまりやすくなるのです。つまり冷えのぼせの正体は「熱がありすぎる」ことではなく、ここまでお話ししてきた「冷え」だと私は考えます。
実際、当院でも側頭部の症状に、顔や上半身のほてり・息苦しさ・夜中に何度も目が覚めるといった自律神経の乱れが重なっている方を診ることがあります。のぼせだけを冷まそうとするより、土台の冷え——下半身のめぐり——を整えるほうが、結果として熱も降りやすくなる。これが当院の治療の組み立てです。
冷えない体をつくるために、生活でできること
- 体の緊張を取ること
- しっかりとした食事をとること
- 精神的な緊張があるときは、しっかり発散すること
ありきたりに聞こえるかもしれませんが、食事について一つだけ挙げるなら「たんぱく質のある温かい食事」です。ここまでお話ししたとおり、血の中身を作るのはたんぱく質で、冷たい飲食は胃腸を弱らせて吸収を落とすからです。
一度に全部を改善するのは難しいと思います。心当たりのあるものから、少しずつ試していってください。
冷えに対して、鍼灸がお手伝いできること
当院の冷えの治療は、冷えている手足を直接どうこうするものではありません。「温める」のではなく「めぐる体にする」ことを目指します。
- 肩まわりや肋骨まわりの経絡(けいらく=気・血・水の通り道)を整えて呼吸を深くし、緊張をゆるめます
- 自律神経を調節して胃腸の調子を整え、食事の吸収を助けます
鍼灸の施術は、暖房のスイッチを入れるようなものだと私は説明しています。スイッチを入れても、暖かい空気が部屋中に回るまでには時間がかかります。体も同じで、血流や代謝が回復して手足の先まで温かさが届くには、少し時間がかかります。施術直後に劇的な変化がなくても、「明日の朝起きたときに少し良くなっていれば成功」。そんなペースで、冷えない体を一緒に作っていければと思います。
冷えは我慢できてしまうぶん、後回しにされやすい症状です。ですが、めぐりと中身が足りない状態を放っておくと、肩こりや頭痛、むくみなど、別の不調の土台にもなります。「これくらいで相談していいのかな」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
質問だけでもお気軽にどうぞ
