「髪を結ぶときに肩が痛む」
「背中に手を回すときに激痛が走る」
そんな症状に悩む方は少なくありません。いわゆる四十肩・五十肩は単なる「肩が痛い」だけではなく、肩を使って手を後ろに回せなくなる症状が出ます。
主に肩関節周辺の組織に炎症や機能障害が起こることで可動域の制限が生じている状態です。

西洋医学では「肩関節周囲炎」とも呼ばれます。ひどい場合は腕を少し動かすだけでも痛みが強く、日常生活に大きな支障が出ることもあります。

では、この厄介な肩の痛みにはどのように対処すればよいのでしょうか。本記事では、西洋医学での一般的な治療法を簡潔にまとめたうえで、3章から東洋医学の考え方や実際の治療事例などを詳しくご紹介していきます。

1.西洋医学の視点

四十肩・五十肩と診断されると、西洋医学では主に以下のプロセスで治療が進められます。

● 画像検査で原因を把握

  • レントゲンやMRI、エコーなどを用いて、肩関節や腱板、骨に異常がないかを確認
  • 石灰沈着があるかどうかもこの段階でチェックされる

● 薬物療法とリハビリ

  • 痛みが強い場合はステロイド注射や消炎鎮痛剤(NSAIDs)で炎症を抑制
  • 炎症が落ち着いてきたら、**運動療法(ストレッチや筋トレ)**で固まった肩を動かす練習をスタート

西洋医学の強みは、検査によって肩周辺の組織のダメージを可視化し、急性期の痛みや炎症を抑えやすい点です。ただし薬で痛みがやわらいでも、根本的な原因や体質などを見直さなければ、再発や慢性化に悩まされることがあります。

2.四十肩・五十肩の原因と症状

● 主な原因

  • 加齢による筋力低下や関節の変性
    40代以降、肩周りの組織が衰え、炎症を起こしやすくなる
  • 同じ動作の繰り返し
    デスクワークやスポーツなどで肩に過度な負担がかかる
  • 血行不良や生活習慣の乱れ
    不規則な食事や睡眠不足が重なると肩こり、筋肉のこわばりが慢性化しやすい

● よく見られる症状

  • 腕を上げる、背中に回すなどの動作時に激痛
  • 関節の可動域制限(服の着脱がしにくい、ブラホックや帯に手を回しづらいなど)
  • 夜間痛(寝ているときの痛みで目が覚める)

これらの症状が続くと日常生活の質が大きく下がり、精神的なストレスも重なって回復力が落ちる悪循環に陥りやすいのが特徴です。

3. 東洋医学で考える「四十肩・五十肩」とは

● 気・血・水の乱れと「津液」の停滞

東洋医学では、身体をめぐる3つの要素「気(エネルギー)」「血(栄養)」「水(体液や老廃物)」のバランスが崩れることで、痛みや炎症が長引くと考えます。特に肩の痛みに関わりが深いのが、体内の水分を指す「水」や「津液」。
たとえば、

ケース例:水分の滞りが引き起こす症状

  • 肩まわりがむくんだように重だるい
  • 動きが悪く、関節が固まりやすい
  • 痛みがある場所が冷えやすい、湿気の多い日に痛みが増す

こうした状態を東洋医学では「水毒(すいどく)」と呼んで、肩周辺の組織に停滞した水分が痛みを長引かせる要因になると考えます。実際に、冷暖房が効いた部屋と外気温の差が激しい時期に悪化しやすい方も多く、これは水分の代謝がうまくいっていない一つのサインとされます。

● 経絡(けいらく)の調整

肩関節周辺には「三焦経(さんしょうけい)」という経絡が走っており、ここは水分代謝や体全体のエネルギーの通り道にも関わると考えられています。三焦経に滞りがあると、

  • 肩や腕だけでなく、首・背中にかけてのコリ
  • 冷えやむくみ
  • だるさ

などの症状が出やすくなるのが特徴です。
鍼灸治療では、この三焦経上のツボを刺激して水分の巡りを整え、炎症を鎮めることが目的となります。

● 鍼灸の具体的イメージ

例として、肩の痛みが強い方には以下のようなケアを行うケースがあります。

施術の流れ例:

  1. 肩周りを軽く触診し、熱感や圧痛、可動域を確認
  2. 三焦経や関連するツボに鍼を打ち、必要に応じて刺激を加える
  3. お灸(温熱刺激)で局所の血流を良くし、冷えや滞りを解消
  4. 施術後、痛みの変化をチェックし、日常でできる簡単な体操やストレッチを指導

たとえば、「痛みで腕がまったく上がらなかったが、鍼を数本打ってしばらく置いたら、少しずつ動くようになってきた」という方もいます。鍼灸は痛みの抑制だけでなく、血行を促進して自然治癒力を引き出すことが狙いです。

4. 具体的に気をつけたい日常習慣

四十肩・五十肩は急に発症することもありますが、じわじわと負担が蓄積するケースも多いです。東洋医学と相性の良いセルフケアを加えて、痛みの再発予防や生活の質向上を目指しましょう。

(1)水分摂取のバランスを見直す

  • 「水毒」の傾向がある方は、冷たい飲み物や甘いものの過剰摂取を控える
  • のどが渇いていないのに無理に水分をたくさん飲むと、代謝が追いつかずにむくみや冷えを助長することが多いと思われます

(2)温める+軽く動かす

  • 入浴や蒸しタオルで肩周りをしっかり温める
  • 温まった状態で、腕を前後にゆらす・肩を小さく回すなど、痛みのない範囲で軽く動かす

(3)呼吸を深くする

  • 浅い呼吸は胸周りの筋肉を固くし、肩へ負担をかける
  • 一日数回、ゆったりと鼻から息を吸い、口から長めに吐く練習をすると肩甲骨周りが楽になりやすい

(4)日常動作の工夫

  • PC作業やスマホ操作は1時間ごとに軽いストレッチ
  • 特に腕を後ろに回す動作(帯やブラのホックを止める動きなど)を極端に避けすぎると、ますます可動域が狭まることもあるため、痛みが少ないタイミングを見計らって少しずつ慣らしていく
    この動きが前述の三焦経のストレッチになります

(5)食事で巡りを良くする

  • 根菜類や発酵食品を適度にとり、胃腸機能を整えて身体の回復力を高める
  • 糖分の摂りすぎは水分停滞を招きやすいため注意

5. 西洋医学と東洋医学を組み合わせるメリット

四十肩・五十肩は「自然に治るまで待つしかない」と思われがちですが、痛みが激しい時期はステロイド注射や鎮痛剤で炎症を早めに抑え、その後は鍼灸や生活習慣の見直しで根本的な体質改善を目指すほうが、回復がスムーズになる可能性が高いです。

  • 急性期の炎症
    → 痛みを強く感じる間は無理をせず、薬や注射で痛みを落ち着かせる
  • 慢性期の体質改善
    → 経絡へのアプローチや姿勢・食生活の指導を行い、痛みの原因を根本から整える

短期と長期、局所と全身の両面からアプローチすることで、痛みだけでなく「肩が上がらない」「夜眠れない」といったストレス要因も改善しやすくなります。

6. まとめ

四十肩・五十肩は、肩周りの組織が加齢や生活習慣などでダメージを受け、炎症やこわばりを起こすのが主な原因です。西洋医学でレントゲンやMRI、エコーによって構造的な異常を把握し、薬物療法で急性期の痛みを抑えるのは重要な手段と言えます。しかし、痛みがおさまった後に本格的なリハビリや生活習慣の改善を怠ると、再発や慢性化のおそれが残るのも事実です。

そこで、東洋医学の視点を取り入れることで、水分の代謝不良や血行不良といった「体質的な問題」に目を向けられるのが大きなメリットです。鍼灸では、経絡に働きかけて全身のバランスを整えつつ、肩周辺のこわばりや痛みの原因を根本からケアできる可能性があります。施術の具体例としては、三焦経や肩に関連するツボを中心に刺激する方法があり、症状の進行度や個々の体質に合わせてアプローチを変えるのが特徴です。

「腕を上げるのがつらい」「背中に手が届かない」といった症状が出始めたら、まずは痛みを軽減しつつ、生活習慣や姿勢を見直すのが早期回復の鍵です。もし肩の強い痛みや可動域の制限が気になる場合は、我慢せず医療機関や鍼灸院を受診しましょう。適切な時期にしっかり対処すれば、長期的な痛みや肩の固さを防ぎ、快適な日常生活を取り戻すことが十分に可能です。