Kounenki

「なんとなくイライラする」
「突然汗が噴き出して、顔がカーッとほてる」
「夜になかなか眠れず、日中はだるい」……。

40代半ばから50代にかけて、こうした不調を感じる方は少なくありません。更年期障害は女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する時期に起こりやすく、その症状や重さには個人差があります。
「閉経前後の5年間」と聞くと長く感じますが、上手にケアすれば日常生活の質を大きく下げずに乗り切ることも可能です。本記事では、西洋医学と東洋医学、両方の視点から更年期障害の原因や対策を整理しました。


1. 西洋医学から見る更年期障害:まずはホルモンバランスをチェック

● 更年期障害の原因とホルモン検査

女性は閉経に向けて卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が減少します。エストロゲンは生理周期だけでなく、自律神経や骨代謝、皮膚の潤いなどにも広く影響を与えるホルモンです。そのため、急激に減少すると自律神経が乱れ、ホットフラッシュ(のぼせや突然の発汗)イライラうつ傾向肩こりめまい睡眠障害など、さまざまな不調が引き起こされやすくなります。

西洋医学では、血液検査によって女性ホルモン(エストロゲン、FSHなど)の値を測定し、更年期障害かどうかを確認することが多いです。診断のためには、問診や他の疾患との鑑別を行うことも重要で、「同じような症状でも別の病気が潜んでいないか」を確かめる意味合いがあります。

● HRT(ホルモン補充療法)や薬物療法

  • HRT(ホルモン補充療法):不足したエストロゲンを補う治療法
  • 向精神薬・抗不安薬:ひどい不安感や睡眠障害を緩和する
  • ビタミン剤や漢方薬:軽めの症状に対して、負担を抑えながら体調を整える

ホットフラッシュなどの急性症状は、ホルモン補充療法によって早めに落ち着かせられる可能性があります。ただし、ホルモン剤には副作用もあるため、医師と相談しながら進めることが大切です。また、ホルモン以外の原因(不整脈や甲状腺機能異常など)がないか検査で確認しておくと安心です。


2. 更年期障害の多彩な症状とよくあるお悩み

更年期障害の症状は個人差が大きく、10人いれば10通りの訴えがあります。主なものを下記に挙げてみました。

  1. ホットフラッシュやのぼせ、汗が止まらない
  2. イライラ、落ち込み、不安感
  3. 肩こり、腰痛、背中のこわばり
  4. むくみや便秘、吐き気
  5. 眠気・だるさが強く、疲れやすい
  6. 息苦しい、動悸がする

「急に顔がほてって大量の汗が出る」「訳もなくイライラが募り、家族に当たってしまう」など、自分自身でもコントロールしづらい変化が起きがちです。また、更年期障害は程度によっては「日常生活に支障をきたすほど辛い」という方もいれば、「軽い不調が続くものの、一応やり過ごせている」という方もいます。


3. 東洋医学がとらえる更年期障害のしくみ

東洋医学では、身体を「五臓六腑」と「気・血・水(津液)」のバランスで見立てます。更年期障害では、女性ホルモンの減少という変化がトリガーとなり、体全体の巡りやバランスが急に崩れることが大きな要因と考えられます。

● 「7の倍数」で迎える大きな節目

古代中国の医書『黄帝内経』には「女性は7の倍数の年齢で節目を迎える」という記述があります。
昔に放送された養命酒のCMでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
7×6=42歳頃から子宮の働きが弱まり、7×7=49歳頃には生殖機能が終わりに近づく……。
というのが東洋医学でいう更年期です。日本の閉経平均年齢も50歳前後ですから、この時期の体調変化は自然な流れともいえます。しかし、体質やライフスタイルによっては変化がスムーズに進まず、不快な症状が表面化しやすいのです。

● 自律神経の乱れと「腎」「肝」の関わり

東洋医学では、更年期はとくに「腎(じん)」と「肝(かん)」に注目します。

  • :元気の源である「先天の精」を蓄える場所。加齢によってこの精が減ると、冷えやむくみ、骨の弱り、気力の低下などが起こりやすい。
  • :血液を貯蔵し、情緒や気分の調節にも深く関与。肝の巡りが滞るとイライラや抑うつ、こめかみの頭痛、肩こりなどが出やすくなる。

この腎と肝の働きが衰えたり乱れたりすると、自律神経のバランスが崩れやすくなり、更年期に特有の様々な不調が表面化します。


4. 具体的な事例から見る東洋医学的アプローチ

● 事例A:ホットフラッシュと汗が止まらない

50代前半の女性。突然顔がほてって汗が噴き出し、その後は冷えて体がだるくなる。夜も寝つきが悪く、日中は頭がぼんやりすることが多い。

  • 東洋医学的解釈
    • ホットフラッシュ=「上焦」に熱が集中する(心や肺に負担がかかる)
    • 汗が過剰に出る=皮膚や体温調節を司る「肺」の乱れ
    • 汗が引いた後の冷え=上にこもった熱が逆に下肢を冷やす「陰陽バランスの崩れ」
  • 鍼灸アプローチ
    • 胸周り(心・肺)や首、肩甲骨付近を中心に凝りを緩めて血流を改善
    • 下半身(腎・肝)を温めるツボにも刺激を加えて、余分な熱を上ばかりに溜めないよう調整
  • セルフケア
    • 散歩などで下半身を動かしてあげる。上と下の熱のバランスをとる
    • 冷たい飲み物の取りすぎを控え、内臓を冷やさない

● 事例B:イライラや落ち込み、気力の低下

40代後半の女性。職場でも家でもイライラが続き、ちょっとしたことに怒りが爆発してしまう。逆に夜は気分が沈んで眠れず、朝起きるとだるくて家事も面倒に感じる。

  • 東洋医学的解釈
    • 肝の機能低下で、情緒が安定しにくい状態
    • もともと忙しい環境に加え、更年期で「肝による調節機能」がうまくいかない
    • 血の不足やうっ滞により、頭痛や肩こりを誘発している可能性も
  • 鍼灸アプローチ
    • 肝と密接な関係にあるツボを刺激して巡りを良くする
    • 胃腸の調子(脾)も同時に整え、栄養吸収を促し、血を増やす
  • セルフケア
    • 睡眠や休暇を多めに取り、肝臓を回復させる
    • カフェインや糖分を過剰に摂らないよう気をつけ、イライラの原因を減らす

● 事例C:むくみや便秘、下半身のだるさ

60歳手前の女性。最近足首やふくらはぎがむくみやすく、お腹も張って便秘がち。階段を上るのが億劫で、息切れしやすい。

  • 東洋医学的解釈
    • 「腎」が弱り、水分代謝を担う「三焦」の機能が低下している
    • 便秘は「脾・胃」の働きが落ちているサインでもある
    • 更年期を過ぎてからも体質が整わないと、このような不調が長引く
  • 鍼灸アプローチ
    • 足首やふくらはぎ周りのツボを刺激し、血流・水分代謝を促進
    • 腹部にある「中脘」「関元」などのツボを刺激し、胃腸の機能をアップ
  • セルフケア
    • 糖分や冷たい飲み物の摂りすぎに注意し、むくみや血行不良を防ぐ
    • バランスの良い食事をとる、特にタンパク質、ビタミン、ミネラルを中心に

5. 若年性更年期障害への視点

昨今では、20~30代にも「若年性更年期障害」と似た症状が見られるケースがあります。ダイエットやストレス、極端な生活リズムの乱れなどが重なり、ホルモンや自律神経が乱れることで発症することが多いです。

  • 西洋医学的には:卵巣機能低下やストレスによるホルモン分泌異常が原因とされる
  • 東洋医学的には:生活習慣を見直し、食事・睡眠・運動の質を改善することで体の巡りを正常化し、症状を軽減させる余地が大きいと考えられる

実際、「夜更かしや不規則な勤務が続いていた」「過度なダイエットで栄養状態が悪い」といった背景がある方が、鍼灸治療と生活指導で回復していく例も少なくありません。


6. 更年期障害を乗り切るための東洋医学的ヒント

(1)腎を養う食事・生活

  • スタミナのつく食事(豆類、にんにく、豚肉など)を意識して摂る
  • 立ちっぱなしなど、過労は腎臓に蓄えられている「精」を浪費します。適度な休息を

(2)肝の機能をスムーズに

  • ストレスを溜めない工夫(趣味の時間、ウォーキング、睡眠時間の確保など)
  • 過度な飲酒や喫煙は腎に負担をかけやすいため、できる範囲で控える
  • 目を酷使しすぎると肝が疲れやすいので、スマホやPCを見る時間を適度に制限

(3)陰陽バランスを意識

  • 「頭だけのぼせて足元が冷える」「寝付きが悪いのに朝は起きられない」など、陰陽のアンバランスが出やすい時期
  • 上半身が熱く感じるなら、首や肩を冷やしすぎない範囲でアイシング、足元を温めるなどの工夫を、散歩もおすすめ、下半身の血流を良くする
  • 季節に合った服装と食事で、体の適応力を高める

7. まとめ

更年期障害は誰もが経験するわけではありませんが、女性ホルモンが減少する過程で心身の不調が現れやすいのは事実です。西洋医学では血液検査やホルモン補充療法を活用し、重い症状を早期に緩和するのが目的です。ただ、副作用も懸念されていますので、効果がないなど治療が長引く時には注意が必要です。

一方、東洋医学は体の全体的なバランス(気・血・水や五臓六腑)を整え、「腎」や「肝」をサポートしながら根本的な体質改善を目指すのが特徴と言えます。

実際の臨床では、ホルモン剤と鍼灸を併用している方もいらっしゃいます。急性期の辛い症状には薬の力を借りつつ、日常的な不調には東洋医学の考え方を取り入れる――というのも選択肢の一つです。自分がいまどの段階にあるかを知り、無理なくできるケアを続けることが大切です。

もし、更年期の症状が長引いたり、若い世代で似たような不調に悩んでいたりする場合は、検査を受けるだけでなく、ぜひ東洋医学の視点も含めて専門家に相談してみてください。「体を温める」「呼吸を深くする」「食事の質を見直す」など、日常のちょっとした工夫で驚くほど楽になるケースもあります。心と体の声に耳を傾けながら、更年期を乗り越えていきましょう。