「黄帝内経」に書かれている主な疾病について

平成30年 北海道漢方鍼汪会  髙木 一地

1 風病

記述 『素問』:風論42(病症) 太陰陽明論29(生理) 骨空論60(経絡と治療) 病能論46(病理と診法)
『霊枢』:歳露論79(運気)

まとめ
『素問』風論42に「風は百病の長なり」とあるように風邪が引金と
なって多くの病が引き起こされると考えられていた。 風病は風気によるものと賊風によるものの二つに大きく分けられ 風気によるものは病は軽く悪寒、発熱、頭痛、項背強などの症状があり 賊風によるものは伝染病の類などから重篤な病に発展し癘(れい)風 (ハンセン氏病)、偏風(脳卒中後遺症)、五臓の風(五臓の急性炎症など)に なる。

2 熱病

記述 『素問』:熱論31(病症) 刺熱論32(病症と治法) 評熱病論33(病理) 陰陽應象大論5(陰陽と病症)
『霊枢』:熱病23(病症と治療) 五禁61(刺針法)

まとめ
『素問』陰陽應象大論5で「陽が勝てば身熱す」とあり基本的に発熱は
陰陽の失調によるとされる。『内経』には風・寒・暑・湿・燥・火 の六淫によるものと肺・脾・胃・小腸などによるものに大別され その病理と治療について記述がある。

3 痛

記述 『素問』:舉痛論39(病理と病症) 蔵気法時論22(病症と五味) 刺腰痛論41(病症と治法)
『霊枢』:厥病24(病症と治療)

まとめ
『内経』では痛みについて頭痛、胸痛、脇痛、胃痛、腹痛、腰痛などに 分けその病因、病理から弁別法、治療法を述べている。 『素問』舉痛論39では寒気が経脈中に入り気が通じない為に痛みが生じる。 舉痛論39 「経脈流行不止環周不休寒気入経而稽遅泣而不行客於脈外則血 少客於脈中則気不通故卒然而痛」

4 厥

記述 『素問』:厥論45(病症) 方盛衰論80(気の不足)
『霊枢』:厥病24(病症と治療)

まとめ
『内経』の中で最多の病。寒邪、大怒などで気が逆行して生じる病の総称。 別名 厥逆。熱厥、寒厥に大別され、さらに症状により十二経絡それぞれに 厥病があり、また臂厥(ひけつ)、骭厥(かんけつ)など部位別でも呼ばれる。

5 痹

記述 『素問』:痹論43(病症) 『霊枢』:周痹27(病理と病症)

まとめ
痹病は風寒湿の三つの邪気が交じり身体に侵襲し営気衛気の循環が悪くなり 発生する病。痛みと痺れが主な症状で病因の風寒湿の邪の強弱により 次のように分類される。
行痹(風痹)...風邪の強いもの...痛みが遊走(移動)する 痛痹(寒痹)...寒邪の強いもの...激しい痛みになる 著(着)痹(湿痹)...湿邪の強いもの...痛む箇所が一定で長引く 又、筋痹、脈痹、骨痹など痛む部位により分類する場合や心痹、肺痹など五臓に よって分類する場合もある。

6 痿(い)

記述 『素問』:生気通天論3(陰陽と病症)  痿論44(病症と治方)

まとめ
主な症状は知覚鈍麻、運動麻痺などの手足の萎え、腰、膝の麻痺、下肢の浮腫 皮膚の光沢失調などで湿邪、発熱時の熱邪、臓熱などにより生じる病 『内経』では痿証といい足が萎えて動けなくなることを意味している 又、さらに痿躄(いへき)、脈痿、筋痿、肉痿、骨痿などと細かく分類する事もある

7 咳・嗽

記述 『素問』:欬論38(病症)

まとめ
音があって痰のないものを咳といい、痰があって音がないものを嗽という
これには寒、暑、湿、燥などの邪気による外感性のものと臓腑病によるものがある

8 瘧(ぎゃく)

記述 『素問』:瘧論35(病理と病症) 刺瘧論36(病症と治方)

まとめ
和名でオコリともいい激しい悪寒と発熱を繰り返す。 マラリアもこれに該当する 『内経』では風病に属するが足の三陰三陽経脈に分別される

9 積聚

記述 『素問』:舉痛論39(病理と病症)
『霊枢』:邪気蔵府病形第4(脈と病症) 百病始生第66(病因と病症)
『難経』:第55難(病理) 第56難(病症)

まとめ
寒邪が体表から侵入し腹中に波及すると血気が滞り聚り積もって塊を形成する病で 痛みや脹満を引きおこす 『難経』では五積として次のように分類している 伏梁(心) 肥気(肝) 痞気(脾) 息賁(肺) 奔豚(腎)

10 疝

記述 『難経』:第29難(奇経の病症)

まとめ
寒邪又は寒湿の邪による病で陰器(睾丸)から小腸にかけて、ひきつるような 痛みを生じる 『難経』:29難では七疝として奇経八脈の任脈病証を挙げている 七疝...厥疝 寒疝 気疝 盤疝 腑疝 狼疝 癥疝
喘 腫脹 癉(熱性の黄疸) 癲狂 瘡瘍 失眠 嘔吐 泄瀉 便秘 めまいなど

以上 お読みいただきありがとうございます

  • この記事を書いた人

徳田漢方はり院- 徳田和則

先代から受け継いだ伝統鍼灸を次世代に伝えたいと思っています

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