脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)や心筋梗塞は、命にかかわる重大な病気です。西洋医学では、血管が詰まったり破れたりすることで組織が壊死する病態として捉えられます。一方、東洋医学ではこれらを総称して「中風(ちゅうふう)」と呼び、「風に中(あた)った状態」と表現します。こうした病名や状態の捉え方には、古代中国の医療理論が背景にあります。

「中風」という呼び名の由来

東洋医学では、病気を「感・傷・中」という漢字で大まかにレベル分けします。

  • 感(かん):病邪(病をもたらす要因)が皮膚や表面レベルにある状態
  • 傷(しょう):病邪が経絡(けいらく:身体をめぐるエネルギーの通り道)に及んでいる状態
  • 中(ちゅう):病邪が内臓レベルに達している状態

「中風」の「中」は、病邪が内臓や深部の経絡に入り込んだ深刻な病態を示します。現代でいうところの脳卒中や心筋梗塞などは、まさに臓器レベルでの急激なダメージが生じるため、古典の東洋医学ではこうした総称として「中風」という言葉を用いてきたのです。


なぜ「風」なのか?

東洋医学では、自然界の異常な気や環境変化を「風」「寒」「湿」「熱」などに分類し、身体に影響する要因として捉えます。その中でも「風」は変化が素早く、予測しづらい動きをするものの象徴です。脳出血や心筋梗塞は突然起きるイメージが強いため、古代中国の医師たちは「風」によって急激に病が体内に入り込むと見なしました。

とはいえ、急に「風」が吹いて倒れるイメージだけでは、実際の病態を十分に説明しきれない面があります。東洋医学の古典では、「経絡が詰まり、血や気が滞っているところに外的・内的な要因が加わり、膨らんだ風船が破裂するように発症する」と説かれます。このイメージは、現代医学でいう「動脈硬化による血管の詰まりや破れ」にも通じる概念といえるでしょう。


予兆を見逃さないために

脳卒中や心筋梗塞は、突然起こるものだと考えられがちです。しかし、東洋医学の視点から見ると、経絡の滞りや気血の不調和などが、少しずつ進行している場合が多いと考えます。表面化しにくいため、日々のちょっとしたサインを見逃さないことが大切です。古典では「中風に至る前の予兆」として、特に以下の3つを挙げています。

  1. 不眠
  2. めまい
  3. 手のしびれ

これらの症状が「同時に」起きているときは、経絡の滞りが深部に及び始めた兆しと捉えられます。もちろん、現代医学的にも、不眠やめまい、手足のしびれなどはさまざまな原因で起こり得るため、必ずしも脳卒中や心筋梗塞に直結するわけではありません。しかし、こうした小さな体調変化をきっかけに早めの対策を取ることは、未然にリスクを減らすうえでも重要です。


予防と対策:東洋医学の視点から

1. 食事で経絡の流れを整える

東洋医学では「血と気の流れをよくする食材」を積極的に摂ると良いとされます。

  • 野菜を食べる:食物繊維が豊富で、気血の流れを整え、便通を良くすることで全身の代謝をサポートします。
  • 肉の代わりに青魚を意識する:青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に含まれる良質な脂は、現代栄養学的にも血流を良くする効果が期待できます。

また、血管の詰まりを防ぎ、血液をサラサラにする食品としては、玉ねぎ、長ネギ、にんにくなどのネギ類もおすすめです。東洋医学では「辛味」のある食材は滞りを解消するとされており、風邪予防にも良いとされます。

2. 十分な休養をとる

疲れがたまった状態では、身体の自己修復力や免疫力が落ち、経絡の滞りが強まりやすくなります。特に、現代人はストレスや睡眠不足、長時間のデスクワークなどで血行不良が慢性化しがちです。適度な運動と十分な休養を両立し、少しでも体に不調を感じたら早めに休むことが、中風予防には大きな意味があります。

3. 鍼灸治療で経絡のつまりを改善する

東洋医学の大きな特徴として、経絡の気血の流れを整える「鍼灸治療」が挙げられます。鍼灸師が行う治療は、身体のツボを刺激して血流や神経の働きを活性化させることで、潜在的な滞りを解消し、病気の予防や回復力の向上を期待できます。西洋医学のリハビリテーションや投薬治療と併用することで、より効果的なケアを目指すことも可能です。


発症後のリハビリ:早期開始が鍵

もし脳出血や心筋梗塞が起こってしまった場合でも、その後のリハビリの仕方で回復具合は大きく変わります。東洋医学の考え方でも、「病後のケアを早めに始めるほど予後が良い」とされます。これは現代医学のリハビリテーションの基本的な考え方とも合致しています。

かつては、発症後しばらく安静にしてからリハビリを始めるのが一般的でした。しかし現在は、可能な範囲でできるだけ早期にリハビリを行うほうが、機能回復が早いことがわかっています。ご家族や周囲の方のサポートも不可欠ですが、「かわいそうだからもう少し休ませてあげたい」という気持ちだけでリハビリを先延ばしにすると、結果的に回復期を逃してしまう可能性があります。

精神的に不安定な状態の患者さんには、優しく声をかけながら段階的にリハビリを進めることが大切です。少しずつ体を動かすことで、身体機能の再獲得を助けるだけでなく、精神的な安定や意欲向上にもつながります。


E-A-T(専門性・権威性・信頼性)の観点から

脳出血や心筋梗塞の予防やリハビリについて、東洋医学では「経絡の流れを整える」ことを重視し、鍼灸治療や適切な食事・休養を組み合わせて総合的にアプローチします。私は鍼灸師・柔道整復師の国家資格を有し、長年の臨床経験から得た知見をもとに、できるだけ専門性と実用性を両立させた治療を心がけています。

こうした東洋医学の知識は、完全に西洋医学と対立するものではなく、むしろ補完し合う関係です。病気の原因や症状の背景を立体的に捉え、患者さんに合わせた治療計画を立案することで、症状の改善・再発予防に大きく貢献できると考えています。医師の診断や治療と並行して鍼灸治療を受けることで、より早い回復を目指す事例も少なくありません。


まとめ

  • 中風(ちゅうふう)は、脳卒中や心筋梗塞などの深刻な病態を総括する東洋医学的な病名。
  • 予兆として、不眠・めまい・手のしびれなどの症状が同時に出る場合は注意し、早めに対策を取るのが理想。
  • 予防策としては、野菜や青魚など血流を良くする食事の工夫、十分な休養、鍼灸治療などで経絡の滞りを改善しておくことが重要。
  • 万が一発症した後も、早期のリハビリ開始が回復を左右する。家族や周囲の精神的サポートとあわせ、迅速に行動することが大切。
  • 東洋医学は、西洋医学を補完する立場として、患者さんの心身を総合的にケアするアプローチを提供できる。

突然起きるように見える脳出血や心筋梗塞も、実は日頃の習慣や身体のサインに敏感になることで、リスクを大幅に軽減できる可能性があります。あなたやご家族が少しでも体の不調を感じたら、なるべく早めに医療機関や専門家のアドバイスを得るようにしてください。東洋医学の知識を活用しながら、ご自身の身体の声を聞いてケアを行うことは、健康寿命を伸ばし、元気な生活を長く続けるための一歩となるでしょう。


執筆

徳田 和則(院長)

  • 鍼灸師、柔道整復師(国家資格)
  • 北海道漢方鍼汪会 会長
  • 2008年に徳田漢方はり院を開業し、東洋医学をベースとした鍼灸治療や生活指導を行う。
  • 奈良県生まれ、北海道大学卒業。

豊富な臨床経験と東洋医学の知識をもとに、患者さんの自然治癒力を引き出すことを目指しています。いつでもお気軽にご相談ください。