「自然治癒力(しぜんちゆりょく)」という言葉はよく耳にしますが、東洋医学の観点から見ると、自然治癒力を高めるとは具体的にはどうすれば良いのでしょうか。

鍼灸治療では、自然治癒力をサポートすることができます。ここでは、東洋医学独特の考え方として知られる「天地人(てんちじん)」「季節との調和(ちょうわ)」などを中心にご紹介します。

東洋医学では「天地人に従う」という考え方がある

天地人の三才思想とは?

東洋医学には「天(てん)・地(ち)・人(じん)」という3つの要素を重視する「三才(さんさい)思想」という考え方があります。これは、以下のようなイメージだといわれています。

  • : 太陽や宇宙、季節や気候などを含む大きなスケールの自然現象
  • : 地球そのもの、土地や地形など物理的な大地
  • : 天と地の間に存在し、それらのエネルギーや環境の影響を受けながら生きている存在

この天と地がもたらす法則によって、季節の移り変わりがあり、そこに人が調和する形で暮らすことが、東洋医学ではとても重要と考えられてきました。こうした自然とのバランスを取り戻すことが「自然治癒力を高める」ことにつながる具体的な方法といえます。

季節のうごきに「従う」とは具体的にどういうこと?

人間は自然の一部とされ、四季の変化や天候によって体や心にも影響が及ぶという捉え方があります。季節にしたがう、つまり各季節の特徴を意識して暮らすことは、自然治癒力をサポートするうえで大切です。

  • 動き始めるエネルギー
    • 春は植物が芽吹くように、体内の代謝や気(き:エネルギーのようなもの)の流れも外に向かって開きやすいと考えられています。
    • この時期に軽い運動を始めたり、何が新しいことをはじめたりするのは、春に合わせたうごきと言えるかもしれません。

  • 活発に外へ外へ
    • 太陽が強くなり、日照時間が長くなる時期です。気温も上がり、体が活動モードになりやすいです。
    • 広い場所へ出かける、レジャーなどで心を開放することで、ストレス発散や体内のめぐりを良くするのが良いと思われます。

  • 収穫と栄養の調整
    • 秋は実りの季節なので、五穀豊穣をはじめとした収穫を意識しつつ、栄養を整えることが大切と考えられています。
    • 食欲の秋だからといって食べすぎると、夏の暑さて胃腸の機能が落ち込んで回復していないときは、体に負担がかかりやすいです。

  • 休息とエネルギーの蓄え
    • 植物の多くは種の状態で土の中にとどまり、動物も冬眠したりと、自然界はエネルギーを内に閉じ込めている季節とされます。
    • 人間も無理に外へ外へ行動せず、体を温め、よく睡眠をとるなどして「養生(ようじょう:体を養い整えること)」をする時期だと考えられています。

鍼灸治療と五行(ごぎょう)の調節

季節を象徴する「木火土金水(もく・か・ど・ごん・すい)」とは

東洋医学には「五行説」という理論があります。これは、自然界のあらゆる現象を「木・火・土・金・水」の5つに分けて捉える考え方です。季節にも対応するとされ、春=木、夏=火、長夏(梅雨など)=土、秋=金、冬=水のように分けられます。

鍼灸治療で季節のリズムをサポート

  • ツボを選ぶ理由
    • 鍼(はり)や灸(きゅう)を行う際に、この五行説に基づいたツボを使って体のバランスをととのえる取り組みがあります。
    • たとえば「春は体が外に向かおうとする機能をスムーズにするツボ」「冬はエネルギーを内に蓄えやすくするツボ」を重点的に刺激するなど、鍼灸治療では季節に合わせたケアをすることができます。
  • 自然治癒力=体が自分で調整できる力
    • 鍼灸治療では、外から強制的に症状を抑え込むよりも、体が本来もっている回復力を重視しています。
    • 季節ごとの体のリズムを整えることも、自然治癒力を活性化する方法の一つと考えています。

日常生活でできる工夫

1. 旬のものを食べる

自然界の流れに合った旬の食材は、栄養が豊富で体への貢献も大きいと考えられています。季節ごとの新鮮な食材を意識して取り入れることで、体に必要なエネルギーを得やすいです。

2. 外の季節を感じる

日差しや気温、空気の変化を肌で感じることで、自律神経のバランスが整いやすいと思われます。仕事や家事で忙しくても、少し散歩をする、深呼吸をするなど、自然に触れる時間を作ってみるのも一案です。

3. 睡眠を季節に合わせてみる

春は陽が大きくなる時期です。早く起きて陽の時間を大切にすると良いと古典医学では考えています。「早寝早起き」です。夏場は陽をしっかり、陰はあまり必要ない時期です。「遅寝、早起き」です。

秋は陰を育てる時期です早く寝て陰を大切にします「早寝早起き」です。冬はしっかり休むことが大事とされます。「早寝遅起き」です。

一年を通して良質な睡眠や休息をとること基本ですが、季節によって少し工夫するのも面白いと思います。

まとめ

鍼灸治療や東洋医学でいう「自然治癒力を高める」とは、天(太陽や気候)と地(大地や環境)にうまく調和しながら暮らすことで、自分の体が本来もっている回復力を引き出しやすくする取り組みだといわれます。そのために大事なポイントとしては、

  1. 季節の特徴を意識しながら生活リズムを整える
  2. 五行説などを活用した鍼灸治療で、体のバランスをサポートする
  3. 自分自身で旬の食材や外の空気に触れて自然とつながる
  4. 季節に応じた睡眠がある。

これらを意識していくことで、自然治癒力がスムーズにはたらく状態をめざすことができると思います。