あなたの頭痛は、どこが痛みますか?
・後頭部や頭の付け根がガンガン重い。
・おでこの奥が重だるい。
・こめかみがズキズキと脈打つ。
東洋医学では、この「どこが痛むか」を大事な手がかりにします。痛む場所によって、疲れている内臓や乱れているめぐりが違うと考えるからです。
私は札幌で東洋医学専門の鍼灸院をしています。
この記事では、私が普段の治療で使っている頭痛の見立てと、当院で実際に何をするのかをお話しします。
この記事の要点
- 東洋医学では、頭痛を痛む場所で「後頭部(太陽経)」「おでこ(陽明経)」「こめかみ(少陽経)」の3つに分けて見立てます
- 原因は頭そのものより、胃腸の疲れや肝臓・胆のうの負担など「体の内側」にあると考えます
- 当院では、脈とお腹から全身を見立て、3〜5カ所のツボへの鍼で「頭痛の起きにくい体」を目指します

痛む場所でわかる——東洋医学の頭痛の見立て
経絡(けいらく)とは、気・血・水、つまり体を動かすエネルギー・血液・水分が全身をめぐる通り道のことです。
経絡は頭にも通っていて、どの通り道のエリアが痛むかによって、体のどこに負担がかかっているのかを推測できます。
| 痛む場所 | 経絡 | 背景にあると考えるもの |
|---|---|---|
| 後頭部〜頭の付け根 | 太陽経(たいよう) | 首肩のコリ・冷え・疲労 |
| おでこ〜前頭部 | 陽明経(ようめい) | 胃腸の疲れ(食べすぎ・飲みすぎ・冷たい物) |
| こめかみ〜側頭部 | 少陽経(しょうよう) | 肝臓・胆のうの負担(お酒・添加物・便秘・ストレス) |

実際に当院へ来られる方を診ていると、後頭部とこめかみの痛みが混ざっている方が多く、おでこだけが痛む方は少なめです。
また、どこが痛むかはっきりしない方もいらっしゃいます。
そのような方には東洋医学による「脈とお腹の診察」から見立てていきます。
ですから、上の3タイプはあくまで見立ての入り口。実際には組み合わせて読み解いていきます。
後頭部〜首すじが痛む——太陽タイプ
風邪や寒さなどの邪気(じゃき=体の調子を外から乱す要因)が、首すじや背中から入り込んで起こる頭痛です。
「なんとなく風邪をひきかけているな」というときや、疲れがたまっているときに、後頭部がガンガン痛むのがこのタイプです。
おでこ〜前頭部が痛む——陽明タイプ
胃腸の機能低下が背景にあることが多いタイプです。食べすぎ・飲みすぎで胃もたれ気味のときや、冷たい物をとりすぎたときに、おでこや前頭部に重い痛みが出ます。
症例
40代・会社員のAさん。朝食を食べたり食べなかったり、昼はコンビニ弁当、夜は遅い時間にラーメンという日が続くと、夕方におでこが重だるく痛み、仕事に集中できなくなる。
東洋医学ではこういうとき、頭ではなく「まず胃腸を整える」ことを考えます。
こめかみ〜側頭部が痛む——少陽タイプ
肝臓・胆のうの解毒のはたらきが追いつかず、体の中に「にごり」がたまってくると、こめかみがズキズキと痛むと東洋医学では考えます。
お酒や食品添加物のとりすぎ、便秘などで排出が間に合っていないときに出やすいタイプです。
また、東洋医学では「目は肝とつながる」と考えます。夜遅くまでスマホやパソコンの画面を見続ける生活は、肝を消耗させます。
お酒をほとんど飲まないのにこめかみが痛む方は、目の使いすぎが背景にあるのかもしれません。
※本文中の『肝臓』『胆のう』などは東洋医学での体のはたらきの呼び名です。実際の臓腑そのものを指すわけではありません。
その前に——こんな頭痛は、今すぐ医療機関へ
- これまで経験したことのない、突然の激しい頭痛
- 手足のしびれ、ろれつが回らない、ものが二重に見えるなどの症状を伴う
- 高熱や、繰り返す嘔吐を伴う
- 頭を打ったあとから続く頭痛
こうした頭痛では、くも膜下出血・脳出血・髄膜炎などの可能性を、まず検査で確かめる必要があります。
逆にいえば、こうしたサインがなく、病院で検査をしても「異常なし」。それなのに繰り返す。そんな頭痛こそが、東洋医学が力になれる領域です。
病院で「異常なし」なのに、頭痛を繰り返すのはなぜか
ここでは西洋医学の分類を東洋医学に変換します。
1.片頭痛、2.群発頭痛、3.緊張型頭痛をそれぞれ東洋医学でどう考えるかを説明していきます。
偏頭痛(片頭痛)——「血のよごれ」と排出不足
脈打つようなズキンズキンとした痛みで、光・音・においに敏感になり、吐き気を伴うこともあります。西洋医学では、三叉神経や血管周囲の炎症などが関係すると考えられています。
東洋医学では、血のめぐりが悪くなり、よごれた血が頭部に停滞して痛むと見ます。呼吸や便通による排出が滞り、体の「にごり」が蓄積している状態です。
便秘になると頭痛が強くなる方がいるのは、こうした排出の滞りが関係していると考えます。
群発頭痛——肝臓・胆のうからのSOS
一定期間、毎日ほぼ同じ時間帯に、片側の目の奥をえぐられるような激痛が繰り返すタイプです。男性に多く見られる傾向があります。
東洋医学では、解毒や排出を受け持つ肝臓・胆のうに負担がかかり、血の質が乱れた状態と見ます。
毎晩決まった時間に痛む方や、強いお酒を飲むと悪化する方では、肝・胆の状態も確認します。
緊張型頭痛——経絡の滞り
長時間のデスクワークや姿勢、ストレスなどで首・肩の筋肉がこわばり、後頭部から首すじに重苦しい痛みが続くタイプです。
東洋医学では、これを経絡の流れの滞りと見ます。鍼灸治療では、こっている筋肉をゆるめるだけでなく、どの経絡が滞っているのかを見極め、全身のバランスから整えるのが特徴です。
薬でしのぐ日々から抜け出しにくい理由
西洋医学の薬は、急性期の痛みを抑えるのが得意です。片頭痛のトリプタン系薬剤など、タイプに応じた薬もあります。
痛みがつらいとき、薬は大切な選択肢ですから、自己判断でやめる必要はありません。
ただ、薬の効果が切れるたびに頭痛がぶり返すなら、「頭痛が起きやすい体質」そのものは、まだ変わってません。
東洋医学が受け持つのは、まさにこの部分です。頭痛を繰り返す体質を、体の内側から整えていきます。
当院では、頭痛に何をするのか
私の治療は、痛む頭にたくさん鍼を打つものではありません。
1.脈とお腹で、全身を見立てます
最初に手首の脈を診て、次にお腹へ軽く触れて状態を確認します。これを脈診、腹診といいます。
頭痛の背景に胃腸の疲れがあるのか、肝・胆の負担があるのか、冷えや疲労なのか。こうした情報をもとに、その日の治療方針を決めます。
2.まず手足のツボから整えます
「頭が痛いのに、なぜ手足?」と思われるかもしれません。
手足には、全身の経絡につながる重要なツボが集まっています。おでこタイプなら胃腸を整えるツボ、こめかみタイプなら肝・胆を助けるツボというように、見立てに応じて選びます。
私が師匠から受け継いだ治療の考え方に、「慢性の不調は、元気なところから間接的に助ける」というものがあります。
弱っているところを直接刺激しても、機能そのものが弱っていれば、変化は一時的になることがあります。
頭痛を繰り返す方も同じです。痛む頭を直接どうにかしようとするより、原因を受け持つ場所を手足のツボから整えるほうが、結果として「頭痛の起きにくい体」に近づいていくと考えています。
3.うつ伏せで、首・肩・後頭部を確認します
手足のツボで全身を整えたうえで、こわばりの強い首すじや肩まわりなど、症状に応じた場所に鍼をします。
鍼をするツボは3〜5カ所、施術時間は10〜15分ほどです。
使用する鍼は直径0.18ミリで、髪の毛ほどの細さです。銀鍼をお一人ごとに新品で用意し、使い捨てにしています。
頭痛がつらい日でも受けやすい、刺激の軽い治療です。
臨床でよく見るケース
ここで、臨床でよく見るケースをひとつお話しします。こめかみの頭痛で来られる方は、たいてい体が「筋張って」います。前腕の内側——尺膚(しゃくふ)と呼ばれる、東洋医学の見どころ——の筋がピンと張っていて、なかには手首が「く」の字のまま伸びにくくなっている方もいます。肝臓の見どころである右の脇腹に触診の所見が出ていることも多く、皮膚には、代謝が追いつかず体の中の「にごり」が表に出てきたような、細かいブツブツが見られることがあります。うつ伏せになっていただくと、肩もしっかり凝っています。
こういう方の場合、私はまず胸郭(=肋骨まわり)の動きを良くすることから治療を組み立てます。胸郭が動くようになると呼吸が深くなり、特に「吐く」ほうが楽になります。吐き気は「吐く」が足りないときに出てくる、と私は診ています。吐く力が戻って「にごり」の排出が進むにつれて、皮膚のブツブツや吐き気も落ち着いていくことが多いのです。
通院回数の目安:出始めて間もない頭痛なら、数回の治療を目標にします。何年も繰り返してきた頭痛は、体質から整えるために、ある程度の期間が必要です。
詳しい料金や初めての方の流れは、頭痛治療の専用ページにまとめています。

自分でできる、タイプ別セルフケア
セルフケアの一般論を並べても仕方がないので、見立てのタイプごとにポイントを絞ってお伝えします。ご自分の痛む場所に合わせて試してみてください。
おでこが痛むタイプ——胃腸を休ませる
- 食べすぎ・飲みすぎた翌日は、消化のよいものを少なめにする
- 冷たい飲み物や生ものを控えめにする
こめかみが痛むタイプ——肝・胆の負担を減らす
- お酒・食品添加物・甘いもの・油ものを控えめにする
- 食物繊維・水分・軽い運動を意識し、便通を整える
- 夜のスマホやパソコンの時間を減らす
東洋医学では、目の使いすぎは肝を消耗させると考えます。
30代女性のBさんは、毎日2〜3本飲んでいた缶コーヒーを1本に減らし、代わりに水やお茶を飲むようにしたところ、こめかみのズキズキが軽くなったと話してくれました。これは個人の感想であり、変化には個人差があります。
後頭部が痛むタイプ——冷やさない・ためこまない
- 首すじを冷やさない
- 夏の冷房の下では、薄手のストールなどを活用する
- 疲れをためこまず、しっかり休む
どのタイプにも——深く「吐く」
ストレスで呼吸が浅くなると、老廃物を十分に吐き出せないと東洋医学では考えます。
ふーっと深く吐けるようになると腸も動き出し、便通、つまり体の「にごり」の排出も助けてくれます。
1日数回、ゆっくり息を吐く時間をつくってみてください。
頭痛のよくある質問
Q1.頭痛に鍼灸は効きますか?
頭痛のタイプと原因によります、と正直にお答えしています。
東洋医学では、頭痛を「頭だけの問題」ではなく、胃腸や肝・胆など体全体の問題として見立て、その方の原因に合わせて治療します。
効果の感じ方には個人差がありますが、検査で異常がないのに繰り返す頭痛は、鍼灸がお役に立てる可能性があります。
なお、危険なサインのある頭痛は、まず医療機関を受診してください。
Q2.頭痛薬を飲みながら鍼灸を受けてもいいですか?
かまいません。お薬をやめる必要はなく、病院の治療と並行して受けていただけます。
薬の量や服用頻度が気になる場合は、自己判断で減らさず、処方されている医師にご相談ください。
Q3.雨の日や低気圧の前に頭痛がひどくなるのはなぜですか?
東洋医学では、湿気を「湿邪(しつじゃ)」と呼び、体の水分のめぐりを滞らせて不調を起こすと考えます。
湿気の影響が慢性化すると、体の側面である、こめかみや側頭部に症状が出やすくなると見ます。
実際、当院でも蒸し暑い時期には、こめかみや側頭部の頭痛を訴える方が増える傾向があります。
雨の前にこめかみが痛む方には、水のめぐりと肝・胆の負担を整える治療を考えます。

Q4.何回くらい通えば頭痛は楽になりますか?
出始めて間もない頭痛なら、数回の治療を目標にします。
何年も繰り返してきた頭痛は、頭痛が起きやすい体質が年月をかけてできあがっているため、先に回数をお約束できないことが多いです。
それでも治療が進むと、頭痛そのものより先に「体が軽くなった」「よく眠れる」といった変化が出てくることがあります。
こうした変化は、施術する私の側にも見えます。治療がうまく進んでいるとき、皮膚につやが出て、お腹が少しふっくらと柔らかくなります。
それは、体が健康な状態へ向かっているサインだと考えています。
まとめ——頭痛は「頭だけの問題」ではありません
- 東洋医学では、痛む場所である後頭部・おでこ・こめかみから、体のどこに負担がかかっているのかを見立てます
- 原因は胃腸の疲れ、肝・胆の負担、経絡の滞りなど「体の内側」にあると考え、鍼灸と生活の見直しで「頭痛の起きにくい体」を目指します
- 危険なサインのある頭痛は、まず医療機関へ。検査で異常がないのに繰り返す頭痛は、東洋医学がお役に立てる可能性があります
繰り返す頭痛にお悩みの方は、ご自分の頭痛がどのタイプなのか、一度見立ててみませんか。
質問だけでもお気軽にどうぞ


