手首の痛みが湿布で戻るとき、原因は手首にあるとは限りません

マウスをクリックし続けていて、親指の付け根が痛い。
手の甲がだるくて重い。
湿布を貼るとその場は楽になるのに、翌日にはまた同じところが痛む。
「腱鞘炎はなかなか治りにくいよ」
などと言われて、不安になったことはありませんか?
先に結論を書いておきます。
腱鞘炎がなかなか治りにくいのは、その原因が手首以外にあるからかもしれません。
手首が痛いからといって、手首に原因があるとは限りません。
手首の痛みで来られる方の多くは、前腕や肩に疲れが残っています。そこを整えると手首も変わることが多いです。
なぜ手首の痛みで前腕や肩の話になるのか。順に説明します。
クリックのたびに働いているのはどこか
指や手首を動かす筋肉は、手首そのものにはあまりありません。
多くはひじから手首までにあります。
クリックのたびに働いているのはその部分の筋肉です。
もう一つあります。マウスを持っている間、腕は肩から浮かせて固定しています。
肩がこると腕まで重くなる、という経験は多くの方にあると思います。肩と前腕は一本の腕でつながっているので、疲れは手首だけでなく腕全体にたまります。

湿布で楽になるのに、また戻るのはなぜか
湿布は貼った場所を楽にします。手首に貼れば、手首は楽になります。
ただ、前腕と肩の疲れはそのまま残ります。手首の腱を引っ張っている筋肉が疲れたままなので、仕事に戻ればまた同じところに負担がかかります。だから戻ります。
当院に手首の痛みで来られるのは、デスクワークでPCを使う方が多く、とくにマウスのクリックです。調理や美容師の方もたまにいらっしゃいます。
共通しているのは、前腕と肩の疲れが目立つことです。肩から前腕を押していくと強いコリが残っていて、そこも押すと痛みます。
治療ではそのコリを押して「ここが取れればいいよ」とお伝えし、実際に取っていきます。肩や腕のコリが残っていると、手首の痛みは戻りやすいからです。
親指の付け根が痛い人と、手の甲がだるい人のちがい
「手首が痛い」と一口に言っても、痛み方はかなり違います。
親指を動かすと付け根がズキッと痛む。ペットボトルのふたを開ける、スマホを持つ、といった動作で痛む。こういう方は、整形外科で「腱鞘炎」「ドケルバン病」と言われていることが多いです。
一方で、はっきり「ここ」と言える痛い点はないけれど、手の甲が重い、だるい、握りにくい。夕方になると指輪がきつい。こういう方もいます。
どちらかで治療の入り口が違うので、順に説明します。
親指の付け根が痛い(ドケルバン病)
整形外科で「腱鞘炎」「ドケルバン病」と言われるのがこのタイプです。
親指を動かす腱は、手首のところで腱鞘というトンネルを通っています。使いすぎるとトンネルの中で腱がこすれて、炎症を起こします。これが腱鞘炎の一般的な説明です。
ここで腱の状態を考えてみます。腱は筋肉の端です。筋肉が張っていれば、腱もピンと張ります。張った腱はトンネルの中でこすれやすくなります。
緊張すると肩に力が入る、ストレスが続くと体がこわばる、という経験は誰にでもあります。体全体の筋が突っ張っている人は、同じ使い方をしても腱がこすれやすい、ということになります。
東洋医学では、筋の突っ張りを「肝」の興奮(筋の張りぐあいを受け持つ臓器)として診ます。
全身の筋が突っ張っている方が指や手首を使いすぎると、その突っ張りの異常が手首に出ます。
また、東洋医学の経絡(ツボの通り道)として親指を見ると、親指は胃腸につながる経絡で、胃腸の緊張やストレスが絡んでいることが多いです。緊張が続くとお腹が硬くなるのと同じ系統の話です。

治療室ではこうお伝えしています。「全身の筋が突っ張っているけれど、指の使いすぎでその異常が一番ここに出ている。だから全身に効くツボで突っ張りを取って治します。肩や首もゆるめて手首への血流を良くしますね」。
手の甲がだるい、違和感がある
先ほどの親指の話ではなくて、今度は手の甲がだるいとか、違和感がある人の話です。
手は体の末端なので、夕方に足がむくむのと同じで水分がたまりやすい場所です。むくんだ手は動かしにくく、だるくなります。手の甲の重さや違和感は、多くの場合このむくみです。
腕の水分は、筋肉が動くことで心臓の側へ押し戻されます。座ったまま肩を固めて腕を浮かせていると、腕の水は戻りにくくなります。ということは、肩や上腕が固まっていれば、手の甲にむくみが残ります。
東洋医学で体の水分の調節は、「三焦」(水分の巡りを受け持つ臓器の名前)として診ます。
三焦の経絡は、手の甲を通ります。
デスクワークで最初に疲れる経絡です。このタイプの方は、肩・上腕・前腕のどこかに強いコリがあります。
治療室では「むくみあるでしょう、だるさもありますか? むくみと手首の使いすぎでこうなっています。その調節をしますね」とお伝えしています。
肩や首をゆるめて手首への血流を良くするのは、親指側と同じです。
手首の話なのに、なぜお腹と前腕を診るのか
親指側か手の甲かは、痛む場所でわかります。ただし、筋が突っ張っているのか、水分の調節がうまくいっていないのかは、手首を見ても決められません。体全体を見る必要があります。
そのため当院では、脈と前腕、お腹を必ず診ます。
前腕は、筋の突っ張りが分かりやすく出る場所です。お腹は、飲食物で体が壊れていないかを確かめる場所で、胃腸の緊張はここでわかります。
筋の突っ張りがあれば親指側のタイプとして、突っ張りがなければ水分の調節を見て手の甲のタイプとして、治療の入り口を決めます。
鍼灸で良くなるのには、どのくらいかかるのか
原因が1つなら治療は早く、重なっていれば治癒に時間がかかります。
筋の突っ張りとむくみの両方がある方は治りが遅いかもしれません。
その他に、炎症の熱がある方、栄養不足がある方などは、時間がかかります。
そのため、治療の前にどれくらいで治るかを予想するのは難しいです。スミマセン。
1度治療して、その時のお身体の変化で目安をお伝えしています。
治りやすいのは上記の2タイプです。それ以外の手首の痛みでは、一度整形外科の検査もあわせてお受けください。
治療では何をされるのか。痛いところに鍼を刺すのか
痛いところに強く刺すことはしません。手首だけを何かしても戻るのは、湿布で経験済みだと思います。
治療では、肩から前腕にかけてのコリを直接鍼をしないで取ります。手首の近くの手足のツボに軽く鍼をすることはありますが、痛む場所に強い刺激は加えません。
「仕事で手を使い続けるしかない。それでも良くなりますか?」
使い続けると、治りは遅くなりますが、ご自身で出来ることを加えましょう。
オススメしているのは、歩くことです。座って1m先の画面を見てマウスを持っている間、上半身にはずっと力が入っています。
少しでも立って歩くと足が動いて、上半身の力は自然に抜けます。
会社なら、トイレ休憩を倍にするだけでも歩く回数が増えます。少し立ち上がって体操するのもいいですね。
痛いまま仕事を続けながら治療する時には、週2回以上の鍼灸治療が必要になるかなと思います。
まとめ
手首が痛いからといって、手首に原因があるとは限りません。
- クリックのたびに働いているのは前腕の筋肉で、疲れは肩から前腕にたまります。湿布で戻るのは、その疲れが残っているからです
- 親指側の痛みは筋の突っ張り、手の甲のだるさはむくみとして診ます。どちらも肩から前腕のコリを取り、手首への血流を良くします
- 回数は治療前に決めず、1回の変化で目安をお伝えします。2タイプ以外の痛みはあまり治らないので、長引くときは整形外科の検査もあわせて受けてください
- 手を使い続けるなら、歩く、トイレ休憩を倍にする、立ち上がって体操する、をしてください。週2回以上の治療が必要になる時もあります
