はじめに

女性で、「最近肌荒れが気になる」「吹き出物が増えて困る」といった悩みを抱えている方は多いと思います。
もしかすると、その原因は「腸」にあるかもしれません。
東洋医学には**「肺(皮膚)と大腸は表裏の関係にある」**という考え方があり、腸内環境を整えることが肌トラブルの改善につながると言われています。

本記事では、東洋医学の視点から「なぜ腸と肌は繋がっているのか?」を解説し、さらに便秘や肌荒れに悩む方が今日から実践できるケア方法を詳しくご紹介します。

【1】腸内環境と肌トラブルはどう関係しているの?

腸と肌は同じ役目がある、「バリア」という役目

一見すると、腸と肌は全く別の器官に見えます。しかし、どちらも専門的にいうと“上皮組織”というもので、外界から体を守るバリア機能を担っています。

腸内の上皮細胞が乱れると有害物質や未消化物質が体内に入り込みやすくなり、全身の免疫バランスに負荷をかけます。その結果、同じ上皮細胞である肌にトラブルが起きやすくなるのです。

腸内環境が乱れると炎症が起こりやすい

  • 腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)
    腸内には膨大な種類の細菌が住んでおり、これらがバランスよく存在している状態を「腸内環境が良い」と言います。
    • バランスが崩れると(悪玉菌が増えると)、炎症物質が増加し、免疫システムを過剰刺激してしまうことがあります。
    • 結果、肌にニキビ・吹き出物・アレルギー様の症状が現れやすくなります。
  • ストレスとの関連
    腸と脳は「迷走神経」や「ホルモン」を介して密接に繋がり、ストレスが腸内細菌バランスを乱すこともわかっています。腸が不調になると、肌だけでなく気分の落ち込みなどメンタル面にも影響が出る可能性があります。

【2】東洋医学が説く「肺‐大腸」の相表里関係とは?

肺と大腸は表裏の関係

東洋医学の五臓六腑(ごぞうろっぷ)では、それぞれの臓腑がペアを組むと考えられています。そのうち「肺」と「大腸」は表裏の関係(うらおもて、関係)にあるとされ、どちらか一方に不調があるともう一方にも影響が及ぶと言われます。

  • … 呼吸を司り、東洋医学では肌や毛穴・体表を「肺の外側の働き」として捉える。
  • 大腸 … 不要物を体外へ排出する排泄機能を担う。東洋医学では、肺と同様に「外界とつながる入口・出口」を管理していると考える。

なぜ肌トラブルが肺と大腸に関係するの?

  • 肺が弱る → 風邪をひきやすくなったり、肌の防衛機能が下がったりする
  • 大腸が弱る → 便秘や下痢が続き、体内の老廃物や毒素が排出されにくくなる
  • 結果、肌荒れや吹き出物が増える、あるいは**呼吸器トラブル(咳や喘息など)**も引き起こしやすい

こうした経験則が積み重なって、東洋医学では**「肺と大腸を一緒に整えることが大切」**と考えるようになったのです。

【3】具体的なケア方法:肌と腸を整える5つのステップ

ここからは、東洋医学の考えを踏まえた**「腸と肌を同時にケアする」**具体的な方法を紹介します。

1. 発酵食品&食物繊維で腸内細菌をサポート

  • 発酵食品:納豆、キムチ、味噌、ヨーグルトなど
    • 善玉菌を補い、腸内環境を整える即戦力になります。
  • 食物繊維:野菜、果物、海藻、全粒穀物など
    • 善玉菌のエサとなり、便通を促進してくれます。

2. 水分補給と適度な運動

  • 水分:便を柔らかくし、老廃物をスムーズに排泄するために必要
  • 運動:ウォーキングや軽いストレッチで腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す。
    • 運動中に深い呼吸(肺)を意識することで、肺機能と自律神経のバランスも整えやすくなります。

3. ストレスマネジメント(呼吸法やツボ刺激)

  • 呼吸法:ゆっくり4秒吸って、4秒吐く「4-4呼吸法」など、リラックス効果がある呼吸を取り入れる。
  • ツボ刺激
    • 大腸経絡(だいちょう けいらく)の流れを整える代表的なツボとして「合谷(ごうこく)」「手三里(てさんり)」などが知られています。
    • 肺経絡を整えるには「尺沢(しゃくたく)」「列欠(れっけつ)」など。
    • 金属(スプーンなど)でやさしく刺激すると自律神経が落ち着きやすくなるので、ぜひ試してみてください。

4. 睡眠をしっかりとる

  • 寝不足は腸内環境を悪化させる
    • 夜更かしや睡眠不足が続くと、ホルモンバランスが乱れて便秘や肌荒れが進む場合があります。
    • できるだけ決まった時間に就寝し、7時間前後の睡眠をとるよう心がけましょう。

5. 肌への外からのケアも大切に

  • 洗顔やスキンケア
    • 刺激の強い洗顔料や化粧品は避け、バリア機能を維持できる優しいケアを行う。
  • 保湿
    • 乾燥は肌のバリアを低下させるので、適切な保湿でダメージを最小限に抑える。

【4】こんな症状がある場合は要注意

  • 慢性的な便秘や下痢が続く
    → 腸内環境が大きく乱れている可能性。吹き出物や肌荒れだけでなく、疲労感や倦怠感にもつながりやすいです。
  • 呼吸器トラブルが多い(風邪をひきやすい、咳が止まりにくいなど)
    → 肺が弱っているサインかもしれません。東洋医学的には、大腸へのアプローチも並行して考えると症状が改善しやすい場合があります。

【5】まとめ:内と外を一緒に整えて、健やかな肌へ

  1. 腸内環境が肌荒れ・吹き出物に影響を与える
    • 発酵食品や食物繊維などを積極的に摂取し、水分補給や運動で腸をサポート。
  2. 東洋医学では「肺‐大腸」は一体
    • 肺(皮膚)をケアするだけでなく、大腸の働きを整えるアプローチを同時に行うと効果的。
  3. ストレスマネジメントが鍵
    • 呼吸法やツボ刺激、十分な睡眠で自律神経を整え、腸の状態や肌のバリア機能を底上げしよう。

「最近、肌が荒れやすいな」「便秘と肌荒れのダブルパンチでつらい」…そんな方は、ぜひ腸と肌をまとめてケアする方法を試してみてください。外からのケア(スキンケア)と内側のケア(腸内環境改善)の両方を行えば、より早く効果を実感できるはずです。


参考文献

  1. 『黄帝内経(こうていだいけい)』
    • 東洋医学の古典の代表格。肺‐大腸の関係や、五臓六腑の基本的な考え方が網羅されている。
  2. Nature Immunology, 2019
    • 腸内細菌と免疫、炎症の関係を示した研究。腸内環境と全身性の炎症のリンクが述べられている。
  3. Frontiers in Microbiology, 2021 – Gut-Skin Axis: Current Perspective
    • 腸内環境と肌トラブル(アトピー性皮膚炎など)のメカニズムについて最新の知見がまとめられている。
  4. Dermato-Endocrinology
    • ホルモン分泌と皮膚炎症、ストレスとの関連を探る研究が掲載されている。

本記事は東洋医学と現代医学の考え方を融合し、肌と腸を同時に整える重要性をお伝えしました。もし「なかなか改善しない」と感じたら、ぜひ徳田漢方はり院院にご相談ください。東洋医学の観点から、個々に合わせたケアプランをご提案いたします。