前回の記事で「すぐ治る人」と「時間がかかる人」の背景には、もともとの自然治癒力の差があるとお伝えしました。では、その“自然治癒力”を自分がしっかり持っているかを、どのように見分ければよいのでしょうか? 今回は、東洋医学の視点から次の二つをチェックポイントとしてご紹介します。

  1. 背骨が整っているかどうか
  2. 筋肉に弾力があるかどうか

結論から言うと、背骨は「先天的に受け継いだ力(貯金)」を象徴し、筋肉は「後天的に自分で追加した力(現金収入)」を象徴します。これらが共に整っていると、自然治癒力が十分に発揮されやすく、体力や免疫力の回復速度が高まるのです。

1. 背骨が整っている=“先天的”な力がしっかりしている

東洋医学では、両親から授かった力——いわゆる「先天の力」——は背骨に蓄えられると考えられています。背骨がきれいに整っている人は、先天的なエネルギーの“貯金”を十分に持っている状態といえます。

  • 先天的な力は減ることがあるの?
    はい。生活習慣や加齢、慢性的な疲れや無理が重なると、この“先天的な貯金”を取り崩して使ってしまうことがあります。その結果、背骨の並びが乱れやすくなり、姿勢のくずれが顕著になります。
  • 先天の力が弱るとどうなるの?
    先天の力が不足してくると、ちょっとした不調が長引いたり、回復力が急に落ちたりします。いわば「貯金がほとんどなくなった」状態ですので、何かあっても十分にエネルギーを引き出せなくなるのです。

2. 筋肉に弾力がある=“後天的”な力が充実している

一方、筋肉に蓄えられるのは、自分でコツコツと補っていく「後天の力」です。これは日々の食事や呼吸によってつくられる“現金収入”に相当します。筋肉に張りや弾力がある方は、この後天的な治癒力が高い証拠です。

  • どのように筋肉の弾力を高めるの?
    • 呼吸法: 浅い呼吸では十分な酸素が体内に行き渡らず、エネルギーが生まれにくいとされています。深呼吸を意識したストレッチや軽い運動を習慣にすると、酸素供給が増えて筋肉が元気になります。
    • バランスの良い食事: タンパク質やビタミン・ミネラルを適切に摂ることで、筋肉の修復や合成が進みます。特に疲労回復を助ける食材(たとえば良質のたんぱく源や野菜、発酵食品など)を意識して取ると、後天的なエネルギーが不足しにくくなります。
    • 適度な休息: 筋肉が回復するのは休息時です。質の高い睡眠やリラックスできる時間を確保することで、エネルギーを“貯金”しやすい体内環境をつくります。

先天と後天は「貯金と現金収入」の関係

背骨(先天)と筋肉(後天)は独立しているようでいて、実は深くつながっています。後天的に得られた力が余ると、背骨に“貯金”されて先天的な力を補うからです。

  • “先天力が不足=背骨が乱れたらもうダメ”ではない
    背骨が乱れていても、呼吸や食事で後天的な力を増やし、それを貯めていけば“先天の力”も少しずつ回復していきます。これはまさに、お財布に残った現金をコツコツ貯金に回すイメージです。
  • 背骨(貯金)が少ないときこそ、現金収入(後天)を増やす
    先天力が弱まってしまったときほど、しっかり食べ、深く呼吸し、適度に休むことで後天の力を高める必要があります。鍼灸などの施術を受けて全体のバランスを調整しながら、日常生活で徐々にエネルギーを積み立てていけば、少しずつ自然治癒力が取り戻されていきます。

「すぐ治る人」と「時間がかかる人」の違いを改めて整理

すぐ治る人

  • 体力や免疫力を引き出せる土台がある
    先天的な貯金(背骨)と、後天的な現金収入(筋肉)の両方がバランス良く充実。
  • 食生活や睡眠習慣が良好で慢性疲労が少ない
    エネルギーを十分につくれるため、自然治癒力をフルに使いやすい。
  • ストレスケアが上手で呼吸が浅くなりにくい
    心身の緊張をコントロールできるので、回復力が落ちにくい。

時間がかかる人

  • 慢性的な疲労や強いストレスで自然治癒力が低下
    先天・後天ともにエネルギーが不足気味で、貯金と現金収入の両方が少なくなりがち。
  • 食事バランスや呼吸が乱れている
    呼吸が浅い、食事の栄養が偏っているなど、エネルギーをうまくつくれない状態。
  • “貯金”を増やすところから始める必要がある
    施術だけでなく、生活習慣そのものを見直し、少しずつ回復の兆しをつかむケースが多い。

時間がかかっても、改善は可能

「背骨が乱れている」「慢性的に疲れている」と聞くと、すぐに治らないのではと心配になるかもしれません。しかし、鍼灸の施術を継続しつつ、呼吸や食事、睡眠などの生活習慣を一歩ずつ整えていけば、体質は変わっていきます。先天的な不足は後天の力でカバーできるからです。

  • 施術でバランスを整える
    鍼灸などで全身の気血の巡りがよくなると、体に“自然に回復する道筋”ができやすくなります。
  • 日常生活で地道に貯金を増やす
    食事や睡眠など、自分でできる部分を継続的に改善することで、後天の力を増やし、先天を補うことができます。

まとめ

「すぐ治るか、それとも時間がかかるか」は、背骨(先天)と筋肉(後天)の両面からなる自然治癒力の差によって大きく左右されます。背骨が整っている人は先天的な貯金が豊富で、筋肉に弾力のある人は後天的な現金収入が多いため、早い回復を実感しやすいのです。一方、どちらかが不足している場合は、施術で体のバランスを整えながら、呼吸や食事、睡眠などでエネルギーをコツコツ貯める必要があります。

時間がかかるケースでも、正しい施術と生活習慣の見直しを地道に続ければ、回復の兆しは着実に見えてきます。大切なのは、「先天が不足しているなら、後天を強化して補う」という考え方。呼吸を深め、バランスの良い食事を心がけ、適度な休息をとることで、自然治癒力という大きな味方を育んでいけるのです。


(執筆・監修)

徳田 和則(とくだ かずのり)
鍼灸師・柔道整復師
2008年 徳田漢方はり院を開業
北海道漢方鍼汪会 会長
「自然で健康な身体に戻るためのお手伝い」をモットーに、東洋医学の知恵を活かして患者さん一人ひとりに寄り添った施術を行っている。


上記を参考に、ご自身の体調と生活習慣を見直してみると、自然治癒力の現在地を知る手がかりになります。専門的な視点と、日常でできるケアを組み合わせれば、自然治癒力を高めることは決して夢ではありません。もし気になる症状やお悩みがあれば、東洋医学の専門家に一度ご相談ください。自分の身体が本来持っている治癒力の“扉”を開くきっかけにしていただければ嬉しいです。